■小説
□ランボさん10年後へ行く
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うららかな昼下がり。
綱吉の部屋では、相変わらずの光景が広がっていた。
「死(ち)ね! リボーン!!」
「コラー! 無視すんじゃねー!!」
「……う、う……っ、うぅ……。……が・ま・ん……」
「10年後のオレっちに殺ちてもらえー! 10年バズーカ!!」
ドオン!!!!
「ガハハハハ!! 10年後のオレっちは強いもんね!!」
これでリボーンもお仕舞いだ。
そう思うと、ランボは高笑いが止まらなかった。
10年後の自分に頼らなくてはならないのはちょっと悔しいが、10年後も10年前も自分は自分。ようするに、ランボがリボーンを始末できればいいのだ。
「――――おい」
「ガハハハハハハハハハハ……ハ……ハ…………ハ?」
不意に、ランボの高笑いが鳴り止んだ。
なんだか声が聞こえたような気がしたのだ。
しかもその声は自分の頭上から響いたもので、ランボは今の様子がおかしいかもしれない事にようやく気が付いた。
自分の身体の上から息苦しいほどの圧迫感を感じるのだ。
そしてその時になって、自分がふかふかの大きなベッドに寝ている事に気が付いた。しかも、誰かに覆い被さられているような……。
ランボは、怖々と自分に覆い被さる者を見上げた。
「ぴぎゃぁああああああ!!!!」
ランボは大絶叫をあげた。
なんと、自分に覆い被さっているのはリボーンだったのだ。
今のリボーンは10年後の11歳のリボーンであり、ランボの知っている1歳のリボーンではないが、それでもランボがリボーンを見間違える筈がない。
「リ、リ、リボーン……っ」
ランボは訳も分からず、目を大きく見開いてリボーンを凝視していた。
しかも今のリボーンはランボに覆い被さっており、その状態がランボには理解できずに混乱する。
ランボはどうすれば良いのか分からなかった。
11歳のリボーンは、年齢の割には無駄のない均整のとれた体躯をし、容貌も端麗という形容が相応しいと思えるほど整っている。
だが今、その端麗な容貌には何の表情も刻まれておらず、感情の読めない無表情だった。
無表情のリボーンは黙ってランボを見下ろしている。
そんなリボーンの鋭い視線に晒され、ランボはヒッと息を飲んだ。
「う……っ、うぅ……」
ランボの目尻に涙が溜まった。それは今にも泣いてしまいそうな表情である。
そう、ランボは怖くてしょうがなかったのだ。
ランボは、1歳のリボーンにしっかり恐怖を刻まれているのである。それが11歳のリボーンならば尚更である。
だが、ランボは「が・ま・ん」と自分に言い聞かせた。
ボヴィーノファミリーのヒットマンとして、ランボは簡単に泣いてはいけなかったのだ。
だが。
「……ラ、ランボさんは泣かないよ! オレっち、つ、つ、強いもんね……っ。つ、つよ……う、う、うわあああああああん!!」
やはりランボは我慢できなかった。
ランボは泣き出した勢いでリボーンの下から飛び出し、脱兎の如く走り出す。
こうして泣きながら走るランボは、部屋から出て赤絨毯の広い廊下をとにかく走る。
此処が何処かも何がなんだかも分からないが、とにかく大声で泣きながら走っていた。
ランボはしばらく走り、廊下の一番奥に観音開きの重厚な扉を見つけると、泣きながらその扉を開けたのだった。
「ラ、ランボ? ……しかも5歳の」