■WJ私的補完小説

□眠れぬ夜の牛乳
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 イタリアの街中にあるアパートの一室。
 このレンガ造りのアパートの一室に、ランボは部屋を借りて一人暮らしをしていた。
 今の時刻は深夜に近い頃であり、本来なら夢の中にいる時間帯である。
 だが、ランボはダイニングテーブルに着き、牛乳の入ったマグカップを持って満足そうにしていた。
「おいしい……」
 大好きな牛乳を一口飲めば、まるで一日の疲れが癒されていくようである。
「やっぱり眠れない夜は牛乳に限るよね」
 そう、仕事を終えたランボはアパートに帰ってそのまま寝てしまおうとしたが、いざベッドの中に入ると目が冴えて眠れなくなってしまったのだ。
 そこで考えたのが、子供の頃から習慣にしていた『眠れぬ夜は牛乳に限る』というものである。
 ランボはゴクゴクと牛乳を飲みながら、「今なら眠れそう」と心地良い気分に浸っていた。
 そしてこのままランボがベッドに戻ろうとした時、不意に、玄関の扉がカチャリと開く。
「おい、アホ牛」
「あ、来たんだねリボーン。って、アホ牛って言うなよっ」
 リボーンの突然の来訪に少し驚きながらも、ランボは「アホ牛」と呼ばれた事に条件反射のように文句を言う。
 だが、文句を言いながらもランボの口調は嬉しさを滲ませたものだった。
 そして我が物顔でランボのアパートに入ってきたリボーンも、その機嫌は悪くない。否、それどころかアホ牛と呼ぶ声色には微かな甘さが含まれている。
 そうである。リボーンとランボの関係は甘い恋人関係だったのだ。
 ランボは十年という長い年月の間リボーンを追い駆けていた。最初の頃は「殺す」というヒットマン根性であったが、それがいつしか恋愛感情になっていったのである。こうしたランボの想いはつい最近リボーンに通じ、見事に花開いたのだ。
「リボーン、今日の仕事終わったの?」
「ああ、ついさっきな」
 リボーンはそう答えながら、ダイニングに置かれている二人掛けソファに腰を下ろす。そのまま黒いスーツの襟元を緩め、愛用しているボルサリーノをテーブルへ放り投げた。
 今のリボーンは仕事着である黒いスーツを着ているが、仕事を終えてランボのアパートへ来るとビシッと決めたスーツを着崩し、ゆったりと身体を休めるのだ。
 ランボは、自分のアパートでリボーンが寛ぐ瞬間が堪らなく好きだった。
 超一流ヒットマンであるリボーンは人前で寛いだりする事は許されないのだ。それなのに、自分の側では寛いでくれるという事がランボは嬉しかった。
 ランボはこうしてリボーンの姿を目で追い駆けていたが、自分もマグカップを片手に立ち上がる。そしていそいそとリボーンの隣に腰を下ろした。
 そんなランボにリボーンが視線を向けると、ランボは視線を合わせて照れたようにエヘヘとはにかんだ。
 こうした今の二人に漂う雰囲気は、蜂蜜に砂糖を入れたまさに極甘のものである。
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