■WJ私的補完小説

□尻尾の気持ち
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「聞いてください、十代目……っ。リボーンが、リボーンが……っ」
 ランボは訴えるような口調でそう言うと、綱吉の前で「う、う……っ、うわああぁぁぁん!」と堰を切ったように泣き出してしまった。
 そんなランボを前に、綱吉は仕事の手を休めて「ほらほら、泣かないでよ」と苦笑混じりに慰める。
 そう、ランボは今、ボンゴレ屋敷にある綱吉の執務室を訪れていた。
 ランボが仕事以外の理由で綱吉の元へ訪れる時は、遊びに来た時かリボーンと喧嘩して泣かされた時のどちらかである。
 そして今は後者のようで、ランボは綱吉の執務室に入るなり「リボーンが〜!」と泣きだしてしまったのだ。
 本来、ボンゴレ屋敷は簡単に立ち入れる場所ではないのだが、ランボは10年前から綱吉に可愛がってもらっていた事と、雷の守護者という事で許されていた。
 綱吉にとってランボは年の離れた弟のような存在で、ランボが泣きつく場所も10年前から変わらずに綱吉の元なのだ。
「うぅ……、リボーンが酷いんです……っ」
「どうしたの? またリボーンに苛められた?」
 ランボの避難所である綱吉は、ランボを宥めるのも手馴れたものである。
 綱吉はランボの為に常備している飴玉を執務机の引き出しから取り出し、「ほら、これあげるから」と泣き喚くランボに手渡す。
 ランボはその飴玉を見て、嗚咽を漏らしながらも「……ぅっ、十代目……、オレももう15歳になるんですが……」と子供扱いへの不満を口にする。だが、そんな事を言いながらも、手はちゃっかり飴玉を受け取っていたりした。
 綱吉は、こうして大人振りながらもまだまだ子供なランボに目を細めると、「あ、そういえば」とある事を思い出した。
「そういえば、10年前の今頃ってリング争奪戦の時期だったよね? ランボ、10年前に呼び出されてたんだよね」
 そうなのである。10年前の今頃は丁度リング争奪戦の時期にあたり、つい先日ランボは10年前で戦ってきたばかりなのである。
「怪我の具合どう? 結構酷くやられてたと思うけど……」
「はい、怪我の方は大丈夫です。でも……っ、……うぅっ」
 ランボはそう答えながら、またしても新たな涙を溢れさせてしまう。
 どうやら今回の喧嘩の原因は10年前のリング争奪戦が絡んでいたようである。
 綱吉は10年前の出来事に懐かしさを感じるが、ランボにとってはつい先日経験した事になるのだ。
 ランボは溢れる涙を拭いながら、今回の喧嘩の原因をぽつぽつと話し出した。
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