966×K66@

□Ice
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煩い足音だ。
こんな無遠慮にヅカヅカと、自分の領域に入ってくるのは一人だけ。
「クルル〜助けて〜」
ああやっぱりな、と。
クルルは面倒臭そうに扉を開けた。
何事かと思えば、フライングボードが故障したのだと言う。
「あとでな」
「すぐ来て〜」
日向家の裏まですぐに来て欲しいのだと。
「この炎天下にか?イヤなこった」
「そこを何とか〜ねっねっ?」
そうやって頼めば折れると思われているのが、気に入らない。
本来親切心もなければ、律義でもない。
それなのに、頼めば折れると思われて。
「しょうがねぇ…今回だけだぜェ」
工具箱を手に取り、いかにも面倒臭そうに立ち上がる。
結局こうして引き受けてしまうのだ。
全くイカれてるぜと舌打ちしながら。
炎天下の中で、汗を流しながら黙々と作業をする。
暑くてますます頭がイカれそうだ。
「クルル〜助かるであります」
体いっぱいに喜びを表現する。
ああ。イカれてるな。
その素直な喜び様に。
汗がボタボタと流れ、思考が停止しそうな暑さの中で。
「クルル〜ジュース持ってきたであります」
手にしたジュースを見て、頭の中でぐるぐると。
「氷をくれよ」
「へ?」
「暑くてな、ほら」
そうやって口を開ければ、何を求めているのかケロロも悟るのだ。
こぷっと口に氷を含み口移しで渡せば、カランと氷がクルルの口腔に転がりこんだ。
「冷てェな…」
そう言って含まれた氷がクルルの口内で小さくなっていく。
溶ける度にもう一個もう一個と繰り返し、互いの唇までがすっかり冷えきってしまった頃、今度は唇を温めるかのように、貪り合うのだ。
とうに、修理は終わっていて。
太陽も建物の陰に陰り、暑さも和らいだ頃、目的を逸脱した激しい口付けだけが、繰り返されていた。
ああ。イカれてるのさ。
今もこうして。
別の熱を含んだ体を求め合うように。





end


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