GLL×K66

□遠距離恋愛は不埒なミッション
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銀河系は遠い。
ガルル中尉はいつもそう感じていた。
距離の問題ではない、心の問題だ。

愛しい恋人は遠く離れた前線基地任務であり、自身は本部からの命令であらゆる星域を往来している。
逢いたくてもなかなか逢えるものではない。
ただそれを言い訳にするのを好む性格ではなかった。
逢える時間がなければ作ればいい、克服は即ち本人の努力次第なのだと。
ただ持ち前の気鋭さで押し切ってしまうには、一つ重大な問題が生じていた。
努力だけではどうしようもない、悩みの種が。

恋人の心変わり――
まだそうだと決定した訳ではないが、最近どうにも様子がおかしいのだ。
メールもコールも素っ気無いというか、態度が硬い。
元来、気分屋で甘ったれな性分の恋人は、感情の変化が分かり易い。
何か違う、どこかがおかしい。
それは当たって欲しくはない、百戦錬磨の直感ともいうべきものだった。
彼の恋人はいい加減ではあるが、浮気をしたり二股をかけるほど、あざとい性格ではない。
ならば疑うべくは、本気の心変わりということか。
――考えたくはない。
それでも、このまま見過ごすのが良策ではないのは確かだ。

もし仮にそれが事実だとした場合、その相手として最も疑わしいのは誰か。
妥当な線を手繰るならば、彼の部隊隊員の誰かを考えるべきであろう。
ではその四名のうちの誰か。
独自調査の内偵書に目を通す。

まず実弟ギロロ伍長。
これは白だ。何故なら彼には地球で見つけた特別な物がある。
あの不器用な弟にそんな事が出来る筈もない。
次にタママ二等兵。
どうやら公然とケロロへの恋慕を語っているとのこと。
それならタママも白だろう。公然という時点でそれは憧れの域を出ないであろうし、深い関係のカムフラージュとは考えにくい。

次からが問題だ。
クルル曹長とドロロ兵長。この両名は限りなく黒に近い灰色だ。
まずドロロ兵長。
幼少時よりケロロに振り回されるが、その人生における重要性は甚だしいと記してある。
同居の地球人女性とは家族同然の付き合いだというが、そこまで地球に馴染む手腕は侮れない。何よりアサシントップの出。正攻法以外の使い手と見るのが無難だ。
最後にクルル曹長。
小隊中で最も危険な男。恋愛やセックスに一見無頓着に見えるタイプほど危ないのだ。
ケロロが実際にそうだった。あの子供のように無邪気な彼が、実は褥でどれだけ淫らに乱れるかなど、知る人間以外想像もつかないだろう。
人は見掛けによらない。ガルルはそれを嫌というほど知っていた。

ざっと検分した上でもこの二名は極めて怪しい。
手腕に優れた男と、頭の切れる男。
そう考えれば何という危険な場所に、恋人を放置してきたのかと思う。
戦場で掻くような嫌な汗が滲んできた。
今すぐにでも地球へ行きたい。任務も何も放り出しその衝動に任せて。
そしてそれが出来ない己に苦笑した。

それならば、と最良の方法を考える。
休暇を利用するのは手っ取り早いが得策ではない。
自分とケロロの関係が露見すれば、困るのは恋人自身だからだ。
ならば任務を兼ねるしかない。
ガルルは乱れる心を抑えて、それとなく上層部へ根回しをすることにした。

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