行きたくないと駄々をこねれば、赤い機動歩兵は激怒した。 黒い突撃兵はまるで無関係とばかりに新しいスナック菓子の袋を破り、青い暗殺兵は為せば成ると熱い茶をすすった。 黄色い作戦通信参謀に到っては、降って涌いた災難を茶化すように、ニヤニヤとただ笑っている。 「何だよ、みんな。冷たいであります!」 半べそのケロロが非難する声にも反応は変わらず、その言い様にギロロはますます激昂した。 「貴様が隊長だろうが!こんな大事な任務を果たさんでどうする!」 大事な任務こと『ケロン軍部隊隊長会議』は、地球時間の明日より宇宙中立星域内コンベンションセンターにて開催。 各部隊隊長は全員出席のこと。 いかなる理由でも欠席は認めず、とある。 「少しは我輩の身にもなってほしいであります!今から会議用のレポートなんて書けるワケないっしょ!」 時間的余裕がないのは、毎度のこと。 ケロロにとってもっと恐れていることは、レポートの内容そのものだ。 一向に進んでいない侵略結果を、いつもみたいに適当に誤魔化すという訳にはいかない。 会議にはあらゆる星域方面で活動中の、ケロン軍侵攻部隊全隊長が集まるのだ。 自分の体たらくを猛者達の前に晒され、吊るし上げを食らうのは他ならない自分なのだから。 「日頃から遊んどるからいざという時に困るのだ」と言われても、ケロロにだって言い分はあった。 日頃から弛んでいるというなら、他の奴らだって大差ないじゃないか。 毎日武器磨きしかしてないくせに、隊長さしおいてセレブ生活に浸ってるくせに、侵略より町内清掃に励んでるくせに。 腹の中でこっそり悪口を言っているのがバレたのか、くっくっと寒々しい笑い声が聞こえ、通信参謀のことをとやかく言うのは止めた。 とにもかくにもああだこうだ言ったところで、ケロロが会議に出席しなければならない事実を変えることは出来ない。 青ざめるケロロに、クルルが一枚のディスクを手渡した。 「何これ?」 「小隊の軍事記録だ。会議資料の足しにでもしな〜」 いくらクルルが捻くれ者でも、この一大事にまで自分達に不利な資料を用意する筈がない。 ケロロは部下の思い遣りに感謝した。 その夜は徹夜に近い状態でレポートを書き上げ、会議出席のために小宇宙艇に乗り込む。 あることないこと一応書きなぐっただけのレポートではあるが、何もないよりマシだろう。 大体からしてそれ以前の問題なのだ。 侵略そのものが進んでいないのだから。 「まあ、あとはクルルから貰ったディスクもあるし」 たぶん、何とかなるだろう。 希望的観測であっても、ポジティブなのは良いことだ。 全員集合の会議なんて形式的なものが多いし、きっと何とかなるだろう。 何とかなって欲しい、何とかなると思いたい。 心地良い揺れに、すぐさま睡魔が襲ってきた。乗り継ぎの宇宙ステーションまであと一時間。 ケロロ隊長にとっての大仕事が、これから始まるのだ。 |