長編

□追憶ー記憶の中の君と現在の君ー
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また、この季節がやって来た。
この世で一番綺麗で、この世で一番儚い季節……春。

俺は、この季節になると思い出す。

ー彼女の事を……ー


彼女と出会ったのは、中一の春だった。
俺はテニス部に入部し、彼女もまた、テニス部に、マネージャーとして入部してきた。

年月が過ぎ、俺らは三年になった頃から……いや、俺が気付かんかっただけで、ほんまは出会った当初から彼女の事が好きやったかもしれへん。


柚木姫
四天宝寺中テニス部マネージャーにして、プロテニスプレイヤーの兄を持つ彼女は、学校一の有名人でもあった。
容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能。まさに完璧で、文句なしの存在であり、部活だけでなく委員会や生徒会にも携わるほど優秀であった。
そんな彼女にも、恋人が一時期いた。
でも、彼女の会う時間さえない多忙スケジュールに、男の方が呆れて別れたという。

俺は、そんな彼女を一年からずっと見とった。
せやから、焦る気持ちも日に日に募っていった。

それでも、どこかで、卒業までは彼女と一緒やと思っとった。
彼女が関西弁から標準語を話すようになってしまう前までは……。
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