ドリーム2

□隣の893
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あたしの家は2LDK、もちろんトイレ風呂別。ついでに言うと対面式キッチン。しかも都内の高級マンション。大学生の一人暮らしにしちゃ無駄に大きいでしょ?

いや、本当は父さん母さんと三人暮し。あー、三人暮しだった、が正しいかな。ついこの間急な出張?てか海外企業の接待パーティー、海外だからもちろん妻同伴に行ってしまった。しかも、そのまま向こうに転勤辞令貰っちゃいましたとか。
…まあ一応この前二十歳になりましたし?最低限の家事くらいできる…から?

「いやいやいや、なんで単なるオムレツがこうなるの?これじゃ某漫画の可哀相な卵じゃん。うーわあれ実現させるとかあたしすげー、むしろ神?」

目の前には卵のはずが、何故か極彩色の塊。いやー、無理、食えない。洗濯も掃除も人並みに出来るのになんで料理はこんなかな?あれだ、母親が一切台所に立たせてくれなかったからだ……すんません本当は毎回そこらへんのものぶち込んで奇跡的化学反応で未知物質(またの名をダークマター)を生み出して台所出禁になりました。
つまり両親もあたしの壊滅的料理の才能のなさを知っている訳でして。何の対策も無しに娘置いてったら、一週間で餓死するか外食漬けになること請け合いとわかっている訳でして。

「うーん、オムレツ諦めてすき家かマック…はたまた趣変えてピザハットか…」
ピンポーン

……来たか。両親が対策を怠る訳はなく、料理上手なお知り合いに、食事の世話を頼んで行った。文句なく、その人の料理はプロ並みだし、人格だって厳しくも優しい。ただ私はその人の世話に、出来ればなりたくない。いや、いい人だよ?知り合いの娘とはいえ会った事無い子供の世話こうして焼いてくれるし?でもね…。

ピンポピンポピンポピンポーン
「あーわかりましたよ、出ればいんでしょう、出れば!!」

やけくそに鍵を開けると、焦ったようにドアを開け一人の男が飛び込んできた。…マンションの隣の住人にして、両親のお知り合いにして、プロ並みの料理の腕を持つ男。

「奈々!異臭がしたが、大丈夫か!?何があった!!」
「あー…怒らず聞いてくださいね?オムレツに挑戦してまたもや」
「何!!今度は何入れやがった!?」
「だから怒らないでくださいってば!!顔めちゃくちゃ恐いんですよ片倉さん!生理的に涙出て来るんですよ〜!!」

そう、全てにおいてチートなお隣りさんの、唯一にして最大の問題はその顔。本業の人さえ目じゃない迫力は、いくら堅気のサラリーマンと言われても、信じられない。

「生理的だぁ!?てめぇ言うに事欠いてその言い様たぁ良い度胸じゃねぇか…!!」
「ひぃっ!!だからその迫力堅気のものじゃないんですよ〜!!」

あとキレ易い一面も、恐すぎる。




隣の893

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