A

□たすく様/アスラン
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「フリングス少将。言われてた資料、持ってきました」

シン、と静まり返った廊下に私の声が反響して少し響く。
2・3秒待っても返事がないので、再びノックをしてみたけど、結果は同じ。仕方なく、「失礼しまーす、」と戸を開けた。

「…、あ、」

山積みにされた資料やら書類やらに囲まれ、彼は机に突っ伏していた。
そろそろと、音を立てない様に近付けば、スースーという寝息が聞こえる。そういえば、ここ最近起きている少将の姿しか見ていないような気もする。
空いているスペースに持っていた資料を置いて、私は着ていた上着をそっと彼の肩に被せた。少し寒いけど、ここは我慢。

「お疲れ様です、少将」

彼の顔にかかる髪をそろりとかきあげる。起きやしないかと内心ビクビクしていのだけど、案外起きない。

(ああ、まるで物語のワンシーンみたい)

よくある恋愛物の、だ。立場は逆だと思うけど。
そんな考えに至った自分が物凄く恥ずかしくなって、誰もいない筈なのにキョロキョロと辺りを見回してしまう。

「…、起きない、よね…?」

もう一度周囲を確認して、最後に少将が寝ている事を確認する。
馬鹿な考えに胸が早鐘を打つ。ゆっくりと、ゆっくりと顔を近付ける。緊張で小さく唇が震える。

「………、あーっ、駄目だ!やっぱり駄目!」

寸前のところで、恥ずかしさに耐えきれなくなった私は、顔を両手で覆ってその場にしゃがみ込み、上着を貸して正解だと、ほてる顔を押さえながら思った。


唇のを伝える術がなくて、

(20080108)

 

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