神桜鬼

□第五話
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斎藤「先ずは着る物か」





町にでて一番に
向かったのは1件の呉服屋




『斎藤さん‥その、良いんでしょうか‥。お金も必要なのに』




見知らぬ私の為にお金を使うなど
申し訳なく思い問いかけた




斎藤「あんたは今日から新選組の一員だ。この金は近藤局長の好意たるもの。気に病む必要はない。恩に感じるならば局長のため忠義を尽くせばいいのだ」

『はい!』




斎藤組長の言葉にそっと胸を撫で下ろし
彼に続き、呉服屋へ入る







*・*









斎藤「邪魔をする」

店主「いらっしゃい!あら斎藤さん!」



斎藤「彼に何着か見たててやってくれないか」

店主「はい!これなんかは‥‥」




常連なのか
組長と店主は親しげに話し込んでいた




(彼‥か。私、今日から男になるのよね。記憶のない私を拾ってくれた新選組の皆の為にも頑張らなくちゃ)






ーーーーーー

ーー



‥‥‥‥





斎藤「‥ぃ。おい!夜月!!」






『はいっっっっ!!』



突然、大きな声で呼ばれ
ビクリと肩がはねる



斎藤「どうした?まだ具合が良くないのか?」

『すっすみません!!大丈夫です!』

店主「これなんかどうでしょう?」





手渡されたのは
瑠璃色の小袖に漆黒の袴





『綺麗な色‥』

店主「さぁこちらで着替えてくださいな」





やはり少々気が引けて
おずおずと斎藤に視線をやる





斎藤「待っていてやる。だから着替えてこい」

『はい!』







瑠璃色の小袖に黒の袴を履き、

腰に刀を差し

桃色の結紐を取り長い髪を降ろした



(さすがに桃色は変よね)



『斎藤さん!お待たせしました』

斎藤「‥髪は降ろすのか?」

『結紐が‥‥』





紐を見せると





斎藤「確かに男のものではないな。店主結紐はあるか?」

店主「へぇ、こちらに」

斎藤「好きな物を選ぶといい」

『‥斎藤さんが選んでくださいませんか?お願いします!』

斎藤「ふむ。これなどどうだろうか?」






瑠璃色の紐に黒真珠の様な小さい珠が端と端についている





『綺麗!それにしますっ!』

斎藤「その紐は俺が贈ろう。三番組に入った記念だ」

『え?!ぁ、ありがとうございます!大切にしますっ』








彼女が再び髪を上で一つに束ね頂いた結紐で縛ると、艶のある美しい髪が風に靡いていた









それからも何着か着物を買い、
その他細々した物を買いに町を歩く




組長はずっと文句一つも言わず
ついてきてくれた




何か世辞を言う訳でもない
ただ、そこにいてくれる組長‥




時折、微笑んでくれる彼の隣は
不思議と不安な

気持ちを取り去ってくれて















斎藤組長で‥良かった‥

と、温かくなった心












チラリと組長の横顔を見て
頂いた結い紐をそっと優しく撫でた

.
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