神桜鬼
□第十一話
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目の前に闇が広がる
全部飲み込まれてしまいそうな
暗闇が‥‥
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『父さま、母さま、どうして泣くの?』
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私の‥‥記憶?
人間の元へ行く時の、記憶‥
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父「お前を人質に出す父と母を許しておくれ‥」
『私は大丈夫です!私が行けば皆が仲良くなるのでしょう?ならば私は喜んで人間の所へ行きます。だから悲しまないで!ね?』
母「紗綬‥‥。紗綬‥ごめんなさい‥」
父も母も何度も何度も私を抱き締めてくれた
優しくて大好きな父さまと母さま
けれど、何より大好きなのは‥
『兄上さまっ!』
漸くいらしてくれた兄上に駆け寄り、思い切り抱き付く
その力強い腕でぎゅっと抱きしめてくれるけど、表情は悲しみに染まっていた
『反対していたからお見送りも来て頂けないかと思いました!』
王綬「‥どうして紗綬なんだ‥。どうして‥。父上もどうして幼い紗綬を行かすんだ!行くなら俺を‥‥‥!」
ぎゅっ‥
私は兄上を力いっぱい抱きしめる
『兄上さまは父さまみたいな[とおりょう]になるんでしょう?そしていつか私を迎えに来てくれるんでしょう??』
見上げた私に目を見開きながら、困ったように微笑んで頭を撫ででくれる
王綬「ぁあ、もち「紗綬は俺が迎えにゆく」」
言葉を発しようとした王綬を恐れもなしに遮る声
王綬「千景!!!」
『千景さま!?どうして此処に?』
風間「将来、俺に嫁ぐ紗綬を見送りに来たのだ。辛い事があればいつでも知らせろ。必ず何としても連れ出してやるからな」
『千景さま‥とつぐってなぁに?』
風間「ふっ。紗綬の父と母の様に家族となるのだ。お前は俺が好きだろう?」
『うん!大好‥‥』
私が「大好き」と返事をしようとしたら兄上に口を塞がれる
王綬「千景!!!絶対紗綬はやらな「あげないよ」」
又もや恐れもなしに王綬の言葉を遮る男
雪村「俺が紗綬をお嫁さんにするからね。風間おじさんは引っ込んでてよ。紗綬、風間じゃないけど嫌な事されそうになったら逃げるんだよ!必ず迎えにいくからね」
風間と雪村薫がバチバチと火花をちらす中、王綬は紗綬を抱き上げ
王綬「どうして薫までいるんだ!!!それにお前らだけには何があっても絶っっっっっ対やらん!!」
『あはははっ♪私兄上さまも千景さまも薫くんも大好きっ!皆でとつげばいいんだよ♪』
雪村「王綬は仕方がないとして、風間と家族ってのは勘弁してよ‥」
王綬「仕方がないってなんだ!それにこっちから願い下げだ」
風間「では雪村、紗綬が嫁いだ暁にはお前は俺の小姓にしてやろう」
雪村「はぁ?風間、頭おかしくなったんじゃない?」
風間「なんだと‥‥」
バチバチバチバチっ!!
王綬「千景!!薫!!いい加減にしろ!!!紗綬を見送りに来たんだろう!!喧嘩しに来たなら帰れ!」
『ふふふ♪』
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わらってる
父さまも母さまも笑ってる
兄上さまも‥‥
良かった
ありがとう
千景さま、薫くん
紗綬は必ず皆をまもってみせるから
兄上さまをよろしくね
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その後城に着いた私は
客人として扱われる所か、12年間座敷牢へ居れられ一切の自由を失った
でも、琥珀が居たから寂しくなかった
勉学も剣術も世の事も全て琥珀が教えてくれた
兄上さまも千景さまも薫くんも
文をくれたり、こっそり会いに来てくれた
座敷牢でも辛くなかった
だって皆は私を忘れず愛してくれたから
だから
私が牢にいることで鬼達(皆)が傷つかず平和に過ごせるならそれで良かった
それなのに壊した
人間が
己の私欲のために‥‥