main

□消さないで
1ページ/1ページ

「江戸を離れてた間、
どんな仕事してたの?」

俺が帰ってきてすぐは何度もきいてきた。

でも時間が経つに連れて
銀時はその話題には触れてこなくなって、俺も忘れたふりをして、

これで終わっていけば何よりだ。


そう思っているのに自分の中の何かが邪魔をする。


終わらせないないでくれと、


あんなに辛い毎日は後にも先にもないだろう。


目隠しをされ、
手足の自由は奪われ、
毎晩休む暇もなく男たちがやってきては
俺の身体で好き放題遊んで帰っていく。


目隠しをさせていたのは
顔を見られては困るような幕府のお偉いさんばかりだったからだろう。


そんな死ぬよりも辛い毎日の記憶が
なにもなかったかのように消えていくようで...


近藤さんたちに言えば
何も知らなかった自分たちを責める。

銀時に言えばどれだけ傷つけることになるか分からない。

だから誰にも言わない。
そう自分で決めた。

そして望み通り
誰にもバレず、この件は終わろうとしている。

なのに俺は一体なにが不満なんだ?

自分の中からだけ消えてくれない記憶が憎い。


誰かに知ってほしい。
辛くて苦しかったって言いたい。


消さないで、
俺のいない間の不安に思ってた気持ちとか
なんか調子狂うなっていうちょっとした違和感とか

どんな小さなことも

消さないで、消さないで

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ