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□思い破片(前)
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私はひとりで店の外に出てきていた。


店の中では大宴会中で私ひとり抜け出しても
誰にも気づかれないだろう。


パトカーの中で待機している土方さんを見つけた。


「土方さん、上様がお呼びなんですけど。」

「俺をか?」

「ええ。すぐ来てほしいと、」


この人は気づいているだろう。
これは近くにいる人たちに怪しまれないために言ってることだって。


何も言わずパトカーを降りてきた彼を連れて
店の裏へ向かった。




「何の用だ?」

「それはないんじゃないですか?
あんなの見せつけといて」




あれは2週間ほど前

降り出した雨をしのごうと
少し入り組んだ路地へ入ったときだった。

しばらくして雨の音が小さくなると別の音が聞こえてきた。


乱れた呼吸と甘い声



「あっ、はぁん、あぁっ」

「もうちょっと我慢して、一緒にイこ。トシ」

声の持ち主はすぐに分かった。


声のする方へ足が自然と動いた。

やめて!見たくない。


自分の中の何かが必死に訴えたが、もう遅い。

絡まりあうふたつの影が見えた。



「んっ、はぁぁイクっ、ぎんときィ」

「トシ、愛してる。」


2人が達したのを呆然と見ていると
壁を背中にして立っていた土方さんと目があった。


土方さんは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに目の前にいる銀さんに何か言った。


また降り出していた雨の音で声は聞こえない。


それでも何を言ったかは唇の動きで分かった。




銀時、もう一回して




再び始まった行為からなぜか目をそらすことが出来なかった。
その場から立ち去ることが出来なかった。



ふっと我に返って走り去るまで、何度か土方さんと目があった。



ほしいなら俺から奪ってみろ



そういわれている気がした。
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