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□残り香
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俺は昔から匂いに敏感だった。



前の日に男と寝てた女のニオイ

風邪をひく前のニオイ

使ってる歯磨き粉やボディソープの種類も分かる。


知りたくもないことを知ってしまうのもよくあることだ。





1日の仕事を終え、隊士たちは食堂に集まっていた。
その中に総悟の姿が見えない。


「おい、総悟はどうした。」
近くにいた山崎に尋ねた。


「さっき屯所を出ていくの見ましたよ。
ここんとこ外出が多いみたいですね。」


山崎が言った通り、総悟は最近夕食どきに出ていき、夜中に帰ってくることが多かった。


そんな日に総悟から香るのは俺の一番嫌いな
ニオイ

甘ったるい糖分のニオイ


それは今日も例外ではなかった。

「遅かったな。」
帰ってきてすぐに風呂へ入ろうとする
総悟に声をかけた。

「なんか言いたそうですねェ」
疲れたような顔にうっすら笑いを浮かべて言った。

「いや、お前の個人的なことに口出しする気はねぇよ。」

「わざわざ待ち伏せまでしといてそれはねぇでしょう?」

静まり返った屯所に俺たち2人の声だけが響いていた。

「別に待ってなんていねぇよ。」
俺はそのまま風呂場を出た。


俺は総悟がいつまでも自分のそばにいると思っていたんだろうか。
自分の元から離れていく日がすぐそこに迫っていることを受け入れることができない。


総悟の相手がアイツだということも
俺を苛立たせる原因のひとつだった。
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