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□思い破片(前)
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月が昇ると、私の仕事が始まる。

夜のかぶき町には昼とは違った活気がある。
いい意味でも、悪い意味でも


そして今日も月が昇る。


「お妙、おはよう」

「おはよう、おりょうちゃん。
今日は早いのね。」

いつもは私の方が早いのに、こんなこと珍しい


「ちょっとアンタ忘れたの?
今日は上様が来られるのよ。言われてたじゃない。」

「あらっ、忘れてたわ。
今日は貸切だったわね。」


ということは、あの人も来るのかもしれない。

「あのゴリラも来るわよ。
それでなくても毎日のように来てんだから。」


やっぱり。
近藤さんが来るなら、あの人も必ず来る。

私がどんなに頑張っても勝てない相手。




「お妙さーん!!
男、近藤勲。ただいま参りました!」


聞き慣れた馬鹿でかい声が店中に響いた。


「ゴリさん。今日はお仕事なんじゃないんですか?それとも仕事中までストーカー活動ですか?」

そのときあの人の声がした。


「近藤さん、もうすぐ将軍が到着するそうだ
とっつぁんから連絡が入った。」


黒い髪にきっちりと身につけられた隊服。
低い声はこの人が男であることを物語っている


「上司も部下も問題児ばかりでたいへんですねぇ。土方さん」


土方さんは気まずそうにこちらを見た。

「そんなこともねぇよ。」

短く答えて店を出て行ってしまった。




なんで・・・
あの人は男なのに。

高い身長も低い声も
男だらけの真選組をまとめ上げていることも
すべてあの人が男である証なのに・・・。


なのに勝てない。


銀さんは女の人好きだったじゃない。
それなのにあの人に勝てない。
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