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□思い破片(後)
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「銀さん、起きてください。銀さん。」

寝起きの悪い銀さんを毎朝起こすようになって
2年ちょっと。
私は毎日、この万事屋に通うようになっていた。



あの人が江戸を離れて、銀さんを手に入れるのは案外簡単だった。
寂しさに付け入ればすぐに私に揺らいだ。



「あぁー、どうせ仕事もこねぇんだからいいだろ?」

そう言って布団にもぐりこんだ。


「まったく。朝ごはん片付けちゃいますからね。」


その時、玄関のチャイムが鳴った。

「出てくれ。」
銀さんは布団の中から言った。





「はーい。」
ドアを開けると、そこには少し痩せたように見える土方さんが立っていた。


「お前、なんでここに・・・」

土方さんは驚きを隠せない様子で言った。


「決まってるでしょう?
2年以上経ってるのよ。銀さんがいつまでもアナタのこと愛してたとでも思う?」

土方さんは石のように動かなかった。


「ちょっと待っててください。
銀さん呼んできますから。」





今だ布団から出てこない銀さんに言った。
「銀さん、お客さんですよ。」

「客?依頼か?」

私はその質問には答えずに言った。


「隣の部屋で待ってもらってますから。
私はこれで、」





万事屋を出ると、頬に冷たい風があたった。


大丈夫。
銀さんはもう私のものなんだから。



せいぜい思い知ればいいわ。
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