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□一年で一番嫌いな日
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12月24日

俺の一番嫌いな日



クリスマスイブで浮かれきった町はひどく心地が悪い。

ギラギラ光るイルミネーションも全然綺麗に見えない。


「山崎!
ちょっとコンビニで肉まん買ってきてくれィ」


クリスマス前夜祭の警備に俺たち真選組は借り出されていた。


「おいっ、聞こえてるか?
やーまーざーきー」

さっきから俺の正反対の位置にいる沖田隊長が叫んでいる。


「あの、局長。
あれどうしましょう?」

俺は隣にいた局長に言った。


「俺はあんまんで頼む。」

「・・・。」







「結局パシリかよ。」

肉まんとあんまんの入った袋を提げて
俺は局長達のいる広場へ向かった。


「何やってんだお前。」

後ろから声をかけられて振り返ると、煙草をくわえた副長が立っていた。


「副長、聞いてくださいよ。
局長まで俺のことパシリに使うんですよ!」

「んなもん知るかよ。
文句ならアイツらに直接言え。」

そう冷たく言って、俺の持っていた袋を取り上げた。

「えっ?あの・・・」


「これは俺が持っていくから、お前は休憩入れ。」


「あっ、ありがとうございます。」



副長の優しさはいつも分かりにくい。



「副長!」

広場に向けて歩き出していた副長を呼び止めた。


「なんだ?」

「このあと空いてますか?
よかったら飲みにでも・・・」

「悪い、総悟におごれって言われててな。
お前も一緒に行くか?」


去年もそうだった。
沖田隊長は副長のクリスマスの予定をしっかり押さえていた。


「いえ、予定があるならいいんです。」


前夜祭の警備は毎年恒例の仕事だ。


次の日はというと、酔っぱらいの喧嘩とか子供の迷子まで全て報告書を作り、朝まで屯所に箱詰め状態になる。


つまり俺たちがクリスマスを楽しめるのは今日の夜中しかないのだ。
    

「じゃあ俺、休憩行ってきます。」



これだから嫌いなんだ。



副長は沖田隊長にとられるし、

俺はいつも何も出来ないし、

相変わらず町は浮かれている。



「あー、嫌いだ。」


12月24日
俺の一番嫌いな日
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