〜鬼に魅入られし者〜

□第1話
1ページ/1ページ







あの時、私は鬼となった。










―鬼に魅入られし者―








ここは、京と呼ばれる都。



私はひとり、この地へやって来た。



離ればなれになってしまった友だちに会いに…。









「……ここが、京か…。」





どうやら私は、数日前に平安時代にタイムスリップしてしまったようで、




この京が昔、歴史の授業で習った「平安京」らしい。




もっと綺麗な都なのかなって思っていたけど、そんなことはなかった。





京の人間に話を聞いてみると、それもこれも、「怨霊」というのが京に災いをもたらしているのが原因みたいで。





「鬼が怨霊で人を襲ってくるから」




「鬼が俺たちを苦しめるんだ!」




「「鬼がいるから……!!」」





皆が口々に同じようなことを言っていた。







「…………。」









「だけどね、お嬢ちゃん!」






「………はい。」







「やつらなんかきっと龍神の神子様が追っ払っちまうさ。」






「龍神の…神子…?」






「あぁ、そうさ!」






「神子様が京の怨霊も、穢れも何とかしてくれるんだよ!!」






「………はぁ。」







鬼だ、怨霊だなんだって信じられない。



その上龍神の神子って何!??



漫画とか、オカルトじゃああるまいし…。





その「神子様」がいれば、世界は平和になるのか…。




どんだけ非現実的なんだよ…。





…ま、今こうしてこの場所にいること自体、非現実的なんだけどね…。
















こっちに来てからもう何日も過ぎたんだ。





この「今」がもう、私にとっての現実だってことは、受け入れざるを得ない。













「……行かなくちゃ、日が暮れる前に…。」











「あの子の所に……。」













.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ