TalesShort
□だから言ったのに
3ページ/4ページ
半刻ほど経ったころ、カイルがみんなを呼びに出てきた。
どうやらルーティとの話は無事に済んだようだと密かに胸を撫で下ろすケイリー。
あと残っている問題は自分と、ジューダスのことだ。
神のたまごが現れるまで孤児院で過ごすことになった一行は改めて孤児院の中に入っていく。
孤児院で育ったロニを抜かし、改めて挨拶を交わすリアラ、ナナリー、ハロルド。
「やだ、カイルにロニったら。みんな可愛い女の子ばかりじゃない。それでそっちの子は……えっ、あんたまさか?」
ケイリーに視線を移したルーティが目を見開いてた動きを止めた。
さっきほどまで笑顔とは取って変わり、心底驚いているといった表情だ。
「やぁ、ルーティ、久しぶり……私のこと、覚えてる?」
ケイリーは苦笑したまま片手を挙げる。
「ケイリー、あんた生きてたの!?」
「や、死んでた」
「はぁあ!?でもあんた足あるじゃない!」
「幽霊じゃないんだから、足はあるよ」
「ちょっとそれってどういうことよ、説明しなさい!説明!!」
「る、ルーティ、ちょっと落ちついて」
ルーティはケイリーが停止するのも聞かず青くなったり、口をパクパクさせたり、身体をあちこち叩いてみたり。
たしかに死んだはずのかつての仲間が生きて目の前に現れたら驚くどころの騒ぎではないだろうが、先に正体を明かしたフィリアやウッドロウの時があまり大げさなリアクションをされなかった。
その為、ケイリーはルーティのこの反応こそが普通だと思っておらず、逆にどう説明して良いか分からずオロオロとしてしまう。
余りの勢いに仲間達もポカンとしてしまい、いつの間にかルーティに肩をガッシリと掴まれてガクガクと揺さぶられているケイリーは段々と顔色が青くなってきた。
見かねたジューダスが二人を勢い良く引き離す。
それはもうバリッとかベリッという音がたつようにである。
「ジューダス、ありがとう。もう一回死ぬかと思った」
ルーティから解放されたケイリーは涙目になりながらお礼を言った。
そんなケイリーを呆れた目で見ながらジューダスは溜息を吐き出す。
「……お前、少しは考えろ」
「ごめん、ごもっともでした」
今回はジューダスの方が正しい。素直にそう認めたケイリーは今更ながらフィリアとウッドロウが人並みを外れていたのだと思い知った。
改めてルーティに事情を説明しようとしたケイリーだったが、それよりも早くケイリーから放されたルーティがジューダスに突っかかる。
「ちょっと、私はこの子に話を聞かなきゃって、あんたも…………まさか……」
詰め寄られたジューダスが顔を逸らすよりも早く、ルーティが彼の正体に気付く。
目の前にいる少女が正真正銘の死んだはずのかつての仲間なら、この変な仮面らしきものを被っている少年もまたかつての仲間で。
そして、敵対した死んだ自分の弟。
ルーティが震える手で口覆う。
ジューダスもまた一言の発せずに下を向いていたが、やがて溜息を吐き出すと観念したように自ら仮面へと手を掛けた。
そしてゆっくりと仮面を外していく。
カイルから「え?仮面外すの!?」なんて聞こえてきたが、この際気にしない。
「そうだ、僕はリオンだ。姉さん……」
仮面を外したジューダスは今度こそしっかりとルーティに向き合った。
ケイリーやカイル達はそんなジューダスとルーティを心配そうに見つめる。
ルーティは勢い良くケイリーとジューダスの二人に抱きついた。
「リオン、ケイリー!あんた達、生きてるなら生きてるって連絡くらい寄こしなさいよ!」
ルーティの顔には涙が流れていた。
ケイリーの瞳にも涙が浮かぶ。
「ごめん、ルーティ。ちゃんと話すから」
「当たり前よ」
ケイリーもルーティを抱きしめ返す。
人に抱きつかれるのが気恥ずかしい(ましてやそれが仲間の目の前というのがされに気恥ずかしさを倍増させている)ジューダスも今だけは振り払いはせず、ルーティの気の済むまで動かなかった。
そのまま三人はしばらく抱きしめ合っていた。