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□お題「リオン・マグナス」
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02.剣士
「なぁ、リオンはなんで剣士になろうと思ったんだ?」
旅の最中。
宿屋で夕食を食べ、みんなで談話をしていると、スタンが唐突もなくそう切り出してきた。
リオンが何を言い始めたんだコイツって目でスタンを見てる。
「どうしたのよスタン。急にそんなこと」
「いや、だってさ、オレはじっちゃんが城の兵士だったからそれに憧れて剣の修行を始めたんだけど、みんなは何でかなって思って」
ポリポリと頭を掻きながら言うスタンにルーティは思いっきり溜息を付いた。
「またアンタは。そんなこと聞いてどうするのよ?」
「えー、別に良いだろう」
「フン。おおかたルーティは人に言えない理由でもあるんだろう」
馬鹿にしたようにリオンが吐き捨てる。
リオンはルーティには辛辣だ。
まぁ、リオンがルーティに突っかかるのは今に始まったことじゃないし、基本的にルーティ以外にも辛辣な物言いをするけど。
「バカ言わないでよ!私は小さい弟や妹を守る為に剣をとったのよ」
小さな頃からアトワイトと一緒だったし、と腰のアトワイトをひと撫でする。
「ルーティは本当に家族思いなんだね」
「まぁね。そういうアンタはどうなのよ、ケイリー」
「え?私はまだ半年くらいだよ」
「えぇ!?半年でこんなに強いのか!?」
スタンが驚き、身を乗り出してくる。
それに若干引きつつ、チラリと横に座るリオンを見た。
「うん。先生がね、超スパルタなの」
「先生って?」
「リオンだよ」
「「「「リオン(さん)」」」」
隠すことでもないと口にした名前にみんなが異口同音で驚愕の声を上げた。
どうでも良いけど、みんな叫びすぎだから。
剣の話題になってから聞いているだけだったフィリアやマリーまで混ざってたよ。
「リオンがね、"僕の補佐なら剣くらい扱えるようになれ"とか言ってきて……」
今思えば中衛から後衛の自分に前衛の武器を使えとは無茶振りにも程があったな。
「で、だったらリオンが教えてって頼んで今に至るんだよ」
「へぇ〜、この客員剣士様が良くすんなりと教えてくれたわねぇ」
ルーティがニヤニヤとリオン見る。
またリオンの鉄拳が飛ぶから止めといた方が良いと思うよ。
あれ?てっきり何がおかしいとか怒り出すと思ってたんだけどスルーなんだ。
「良いなケイリー。なぁ、リオン。オレにも剣を教えてくれよ」
「断る。ケイリーだけで手一杯だ」
「なんだよ、ケチだなぁ」
「じゃ、私はしばらく一人で鍛錬するから、その間にスタンに修行つけてあげなよ」
我ながら名案だ!
あ、そうすると私はスタンの兄弟子ならぬ姉弟子になるのか。
スタンがリオンにしごかれてるのを見ながら横で素振りするのでも良いしね。
なんて考えていると横からあからさまな溜息が聞こえてきた。
「お前に一人で修行させたら腕が落ちるだろう?」
「ちょっとひどくない?」
そこは私との時間が少なくなるのが寂しい〜とか素直に言ってほしいところ。
リオンは普段察しが良いのに乙女心には鈍感だよね。
「とにかくだ。僕はスタンには修行を付けない」
『坊ちゃんはケイリーと一緒の時間を邪魔されてくないんです!』
「こら、シャル!!」
「ふ〜ん」
ルーティが先ほどよりニヤニヤしながら私とリオンを交互に見てくる。
見ればフィリアは顔を赤らめてるし、マリーはうんうん頷いている。
「とにかく、この話は終わりだ。行くぞ、ケイリー」
そう言って強引に人の手を引っ張り、みんなのところから連れ出されてしまった。
「ねぇ、リオン」
話かけるとこちらには振り返ってくれないまま、なんだとぶっきら棒に返される。
「私もリオンとの修行の時間好きだよ」
そう言うと握った手に力を込めて握り返された。
リオンの耳が仄かに赤くなっていることに気付き、私も嬉しくなった。
Fin