TalesShort

□愛してるで締めくくる
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「それとスタン。お前は僕のことを友達と言ったが……」

ああ、ついにここまできてしまった。
あのお決まりの文句が彼の口から漏れたらリオンとお別れ。
私はなんのために、ここまで来た?
リオンを助けるといって、結局なにも出来なかった。

このままこのリフトに乗っていれば、今は助かる。
でも……リオンとは永遠にお別れ。
それに降りたところでつかの間しか一緒にはいることができない。
そんなことは知っている。そう、私は知っているはず。
でも私は……

「僕はお前のように能天気で馴れ馴れしくて図々しい奴が大嫌いだ。
 だから後はまかせた」

つらつら考えているうちに時は刻一刻とその秒針を進める。
無情にも待ってと願う心とは裏腹にリオンが作業用リフトのハンドルを下ろした。
足元が一度ガタンと揺れ、リフトがゆっくりと上昇を始めた。
もう迷っている暇はない。今は唯自分の心が叫ぶ様に素直に。

「みんな、ゴメン!私はここでお別れ」

誰となしに別れの挨拶を投げ、ケイリーはリフトから滑るように飛び降りた。

「ちょっと、ケイリー!?」
「ケイリーさん!??」

ルーティやフィリアの驚いた声が聞こえる。
みんなリオンに集中していて気が付かなかったのだ。
ケイリーがこのリフトを降りようとしていたなんて。

だって私はまだリオンになにも伝えていないから。

「スタン、あまりルーティとケンカしないでね。
 私をここまで引っ張ってきてくれてありがとう」

ケイリーは短い間仲間一人一人の顔を見渡した。

「みんな、大好きだよ!バイバイ」


ケイリーは旅の仲間に笑顔で手を振る。
最後の挨拶なんだから、笑顔を覚えていて欲しいから。
リフトが昇っていき、みんなの姿が見えなくなったのを確認してケイリーはリオンの方にゆっくりと歩き出した。
リオンはというと彼にしては珍しくポカンとケイリーを見ていたが、ケイリーが彼の目の前まで来るとやっと頭が回り始めたのか眼を吊り上げて怒鳴りだした。

「お前はどういうつもりだ!脱出するにはアレに乗る以外方法はなかったんだぞ」

「知ってるよ。そんなの」

凄い剣幕のリオンに対し、ケイリーはヘラっと笑いながら返すと、これ以上はないと思っていた表情にさらに凄みが加わった。
リオンは握り拳を作っており、その手は小刻みに震えているように見える。

「な、な。この馬鹿者が。このままでは貴様は僕と犬死だ!」

「だ〜か〜ら〜、分かってるって」
「分かってない!!なぜお前がそんなことをする必要がある」

「それは……」

ケイリーは言葉を区切ってリオンをじっと見つめた。
ふふ、怒ってる顔もかっこいいなんて重症かもしれない。



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