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□恥ずかしがり屋のKiss
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朝日が昇り始め、鳥達が活動し始める時刻。
珍しく彼、リオン・マグナスもまだ眠りの中にいた。
平時であれば任務前のこの時間には起床し朝の鍛錬の準備をしているが、昨日任務の報告を終えて床に就いたのは深夜日付が変わる直前だった。
今日は任務もなく非番のため、少々寝坊をするつもりなのだ。
あらかじめマリアンにはそのことを伝えてあるので彼を起しに部屋に入る者はいない。

……はずだった。


静まっているリオンの部屋の扉が申し訳程度の音を立てながらゆっくり開く。
扉を開いた人物、ケイリーは部屋の主がまだ寝ていることを確認すると音を立てないように慎重に部屋の中に足を踏み入れた。
後ろ手でそっと扉を閉め、リオンが寝ている寝台まで近づく。
周りの気配に聡いリオンでも昨日の任務は余程疲れたのか、ケイリーが近づいても起きる気配は無かった。
ケイリーは安らかな寝息を立てているリオンの顔が見えるところまできて、マジマジと彼の寝顔を覗き込んだ。
寝ているリオンの表情は普段の眉間に皺をよせているような彼とは比べ物にならないくらい穏やかだ。見ているこっちまで顔がニヤケてしまう。
可愛い〜可愛い〜とひとしきりリオンの寝顔を堪能したケイリーはこの部屋に忍び込んだ目的を果たすべく彼に顔を近づけた。

ケイリーの目的。そう、それは眠っているリオンにチューすることだ。
夜這いか!?勘違いすること無かれ。
彼女はリオンにキスしたいだけで、それ以上のことはこれっぽっちも考えていない。
寝込みを襲うのに変わりないという意見はこの際外にでも投げ飛ばしておく。

ケイリーが身を屈めたとき、寝台のサイドテーブルに立てかけてある彼の相棒ソーディアン・シャルディエのシャッターが開いた。
コアクリスタルが点滅し、聞きなれたシャルティエの声が聞こえる。

『 あれ、ケイリー?おはようございます 』

「シャシャシャ、シャル!?おは、おはよう」

『 なんでどもってるんですか?坊ちゃんは……まだ起きてないみたいですね 』

「シー!大きな声出さないで」

『 大きな声って、僕よりケイリーの声の方が大きいですよ 』

人差し指を口元に宛てて、シーっとジェスチャーしながらも驚きのせいか上ずった声を上げたケイリーに対して、呆れたようなシャルティエの声が脳内に響く。
シャルティエに表情があったら呆れ顔かジト目をしていたことだろう。
ケイリーは急いでリオンを見るが、彼の瞼はまだ閉じたまま。
その様子にほっと息を吐き、再びシャルティに向き直った。



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