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□だから言ったのに
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「ねぇ、ジューダス。やっぱり仮面取ろうよ」

「くどい、取らないと言ってるだろう」

先の戦乱の英雄に話しを聞くため、カイルとロニの故郷であるクレスタにやってきた一行。
イクシフォスラーを降りて、ルーティのいる孤児院へと歩く道すがら、ジューダスとケイリーは延々と仮面について押し問答を続けていた。
ケイリー曰く”どうせバレるのだからこの際潔く骨の仮面を外し素顔でルーティに会った方が良い”とのことだ。
だがジューダスの言い分は違う。

「そもそも、フィリアの時もウッドロウでさえバレていないんだ。ルーティが気付くとは思えん」

と皮肉ったようで、だがどこか寂しげ言いきる。
しかし、ジューダスとは違い自分の正体を隠すどころか自らかつての仲間に打ち明けていたケイリーは知っているのだ。ジューダスがリオンであると皆が気づいていたのを。
確かに普通は18年前に死んだ人間が同じ姿で存在しているなど考えないだろう。
たとえ生きていたとしても容姿は18年の歳月をえて大人のそれへと変わっている。
だがケイリーは18年の月日が経っているにも関わらず、命を落とした当時の姿で現れた。
となれば、ジューダスの正体がバレないはずがなかった。
そもそも彼が仮面と称してかぶっている竜の骨は顔を隠せるものではない。
見る人が見ればジューダスがリオンと思うのは当然のことだった。
現にウッドロウには生暖かい目でジューダスを見た後に「リオン君を頼んだよ」と言われるし、フィリアには「リオンさん変わった趣味になりましたね」と言われている。
ケイリーがその二人に乾いた笑いしか返せなかったのは、まだ新しい思い出だった。

「絶対バレるって、ジューダス。そしたらルーティに笑われるよ?」

「フン、笑いたければ勝手に笑えば良い」

「そんなこと言って、笑われたら喧嘩になるでしょう?」

「ならん。金目の物でもあるまいし、あの守銭奴は気づかないさ」



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