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□愛してるで締めくくる
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そうこうしているうちに水が足元にも辿り着いてきた。
残された時間は後僅か。
「もう少しでここも水に呑まれるね」
「ああ」
「シャル。愛しの坊ちゃんとの最後に割り込んじゃってゴメンね。私もご一緒させてもらうよ」
ケイリーが彼の愛剣に語りかけると、シャルティエはコアクリスタルを光らせる。
そして音ではない声が直接頭に響くように聞こえた。
『ケイリーと一緒なら不謹慎だけど僕は嬉しいです』
「ふふ、ありがとう」
シャルティエに笑顔で答え、再びリオンに視線を向ければ彼は未だに渋る表情をしていた。
「ねぇ、リオン」
「なんだ?」
「手、繋いで良いかな」
「……好きにしろ」
「うん。ありがとう」
不機嫌な声は相変わらずで。
顔を逸らすように横を向いてしまったリオンだけど、その手を私に差し出してくれる。
そんな優しさが嬉しくて、これで最後なのが悲しくて、手を繋いだままケイリーは顔を俯かせた。
だから気付かなかった。いつの間にかリオンが決意した瞳を私に向けていたことに。
「ケイリー」
「何?」
名前を呼ばれ顔を上げれば、繋いでいた手をリオンの方に引っ張られ、次の瞬間にはリオンに抱きしめられていた。
「リオン?」
「……エミリオだ」
「え?」
耳に入ってくる言葉は分かっても、頭がそれを認識出来ないでいるような奇妙な感覚。
私の顔は間抜けなくらいポカンとしていたのだろう。
リオンは小さく微笑みを浮かべた。
「さっきも言っただろう。僕の本当の名前はエミリオという」
「それは知ってるけど、呼んでいいの?」
「ああ」
それはマリアンさん以外には決して呼ぶことを許されなかった名前。
ずっとずっと私が呼びたかった名前。
私はエミリオを強く強く抱きしめ返した。
「エミリオ、大好き!貴方だけを愛してます」
「……知っている」
エミリオも私を抱きしめる腕の力を強めてくれたように感じた。
その時のエミリオの表情は今まで見たどんな表情よりも綺麗で。
私は嬉しくて涙が零れた。
その瞬間、天井が崩れ大量の海水がケイリーたちに襲い掛かった。
そのまま私たちは抱き合っていた。
海水が流れ込み、身体が流されても。
お互いを離さない様に、意識がなくなる瞬間までずっと。
ずっとずっと抱きしめていた。
愛してるで締めくくる
最後の瞬間の貴方は私だけのもの
2012.1.9 沙良
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確かに恋だった
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