TalesShort

□ためらいなく触れる手
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「ケイリー!大丈夫か?」

魔物を倒し終え、すぐに駆け寄ってきたリオン。
ケイリーは大丈夫だと答えるが、聞かず彼女の傷の具合を確かめる。
座り込んでいる彼女の左太股には血が滲んでいた。
先ほどスタンに回復していると聞いていたが、まだケイリーの傷は残ったまま。
回復した形跡がみれない。
リオンは舌打ちをし、近くに立っているルーティを睨みつける。

「おい、ルーティ。何故すぐに回復しないんだ」

「それが、TPが無くなっちゃって……」

「グミがあるだろう」

「グミも先ほどの戦闘でスタンさんが全て食べてしまわれて……」

フィリアの言葉に今度はスタンをキッと睨むリオン。

「え、俺?」

オロオロしだすスタンの胸倉をリオンが掴み上げる。

「き〜さ〜まぁ〜……」

「ちょっ、リオン、ギブギブ」

物凄い形相でスタンの掴み上げたまま前後に振り始めるリオン。
その顔は鬼の様、なんてものじゃない。

「リオン、私は大丈夫だからスタンを放してあげてよ」

ケイリーが止めると仕方なしにスタンを解放したリオン。
リオンはケイリーの側に戻ると、座り込んだままのケイリーをいきなり抱き上げた。
所要お姫様抱っこである。

「ちょ、ちょっとリオン!」

「じっとしていろ。まずは傷の手当てが先だ」

突然のことにジタバタと暴れるが、細腕のどこにそんな力があるのかリオンの腕が緩むことはない。
リオンはケイリーを抱えたまま一人歩き始めてしまった。
リオンに解放されたときに、そのまま倒れてしまったスタンを助け起していたルーティもリオンの行動に目を丸くしている。

「あいつ、やっぱりどこか頭ぶつけたんじゃないの?」

「リオンさん、最近は特にケイリーさんに優しくなりましたからね」

ルーティからポツリと零れた言葉に同意するフィリア。

「優しくなったってより、過保護よ。過保護!あいつあんなキャラじゃなかったでしょう」

気持ち悪いと身も蓋もなく言い切るルーティ。
スタンもフィリアも否定することが出来なかった。

「とりあえず、二人を追いかけよう!おーい、リオン待ってくれよー」

小さくなったリオン達の背中を目指して駆け出すスタン。
溜息を付き、ルーティとフィリアも二人の後を追うのだった。




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