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□お題「リオン・マグナス」
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01.黒髪



彼の髪はサラサラだ。
女の私から見ても羨ましいくらいにサラサラだ。
陽の光に照らされればキレイに天使の輪が現れる。

「はぁ……」

私はなんとなしに自分の毛先を摘んでは溜息をもらした。
リオンと違ってどこにでもある茶髪。
ここセインガルド王国において黒髪というのは、実はめずらしいのだ。
金髪や私のような茶髪が多い。
それに彼の髪は夜の帳のような色をしているにも係わらず、見る者に重い印象をあたえない。
それに比べて私の茶色い髪はくすんで見える。
強くて、格好良くて、性格はちょっと捻くれているけど優しくて、そして髪まで良いなんて。
天はニ物を与えないなんてウソね。

「おい……」

あぁ、あの髪を梳いたらきっと指通り良いんだろうなぁ。

「おい!聞いてるのか?」

でもリオン触ったら怒るしなぁ。
以前勝手に触ったら取り付く島もなく怒られたっけ。

「ケイリー!いい加減にしろ!!」

「何よ、リオン?」

そんなに怒鳴らなくても聞こえてるよ。
まぁ、あえて返事しなかったんだけど。

「『何』とはこっちの台詞だ。人の顔をじろじろ見て。用事が有るなら言え」

「別に用事なんてないわよ」

「じゃあなんでこっちをじっと見てる」

なんでってそりゃ…………

「リオンの髪、なでなでしたいな〜って」

「は?」

ちょっと、そんな『うわっ何言ってんのコイツ』みたいな目で見ないでよ。

「リオン、地味に傷つくよ」

「お前が変なことを言うからだ」

「別に変なことじゃないもん。ただリオンの髪に触りたいだけなのに」

「はぁ・・・・・・わかった」

ん?
やっと私のこの気持ちを分かってくれたと!?

「じゃあ触っても」

「気が散るからお前は部屋から出て行け!!」

「ひどい!!」

「今日の書類がまだこんなに残ってるんだ!そんな馬鹿なこと考えているなら兵の訓練でもしてこい」

「え〜」

不満をブーブー言ってるとリオンのこめかみに青筋が浮かんだ。
あ……これはマズイかも。

「ぐだぐだ言ってると、この書類の束もお前にやらせるぞ」

彼の机の上には崩れそうな紙のタワーがある。
そんなデスクワークなんてやりたくない。

「わかったわ。くんれんに行ってきまーす」

私は立ち上がって扉へと向かった。

「ケイリー」

「ん?」

顔だけをリオンの方に向けるとそこには顔を赤くさせているリオンが。

「真面目に訓練してきたら、その、少しだけだが・・・・・・触らせてやる」

「了解、リオン様!ダッシュで兵の訓練を終らせてきます!!」

「おい、真面目にだからな」

あと少しだけだと声を荒げるリオンを部屋に残して、私は訓練場へと向けて歩き出した。
今日は絶対にリオンを堪能するわよ!!!



Fin

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