続・妄想

□お楽しみ
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「………」


夜中、もう殆どの隊士が眠りに落ちた頃、沖田は寝巻きのまま、息を殺して屯所の廊下を歩いていた。こっそり歩くその姿は、普通に歩くより寧ろ目立ってしまっていたが、沖田の足取りは自然と忍び足になっている。

行き先は、土方の部屋。
ふと、土方ばかりが自分にいろんな事をするのがズルいと思い、自分も何かしてやろうと思ったのだ。


「はぁ…」


部屋の前に着いた沖田は、暴れる搏動を落ち着かせる為、深呼吸をする。まるで悪戯をする前の子供だ。沖田は必死に見つからないようにやって来た。
しかし、沖田は隠れていたつもりでも、妙に目立つその姿を、大勢いる屯所の中では誰かしらに見つかったとしてもおかしくない訳で、厠へ行こうとしていたある隊士が、その沖田の姿を目撃していた。
そんなことはつゆ知らず、沖田はなかなか治まらない鼓動を抑えるのを諦めて、そっと襖を開けた。


「……っ…」


土方は、とても綺麗な寝相で眠っていた。やっぱり、眠っていてもかっこいいな、なんて考えるが、沖田の作戦は寝ている土方にドッキリでキスをすること。起こしてしまう前に、早く作戦を実行しなければ。
何故、起きている時では駄目なのかと言うと、土方が起きていれば、自分がする前に仕返されるからだ。それも、自分がしようとしていたことの、何倍にもなって。

息も気配も殺して、沖田は布団の上から土方に跨った。土方は起きない。顔の横に両手を付き、心臓が飛び出してしまいそうな程の緊張感の中、土方を見つめ、ゆっくりと顔を近付ける。寝息がかかる程の距離になって、少し顔を傾けて、唇付けようと試みる。
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