続・妄想
□捕らわれて
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ザシュッ―――
刀は大きく弧を描いて、銀時の頬を掠めた。
「…ッ……」
ツー…と、一筋血が流れる。
気が付けば、銀時は傷から溢れる赤い液体で血塗れになっていた。高杉も返り血を浴びている。白かった筈の銀時の着流しは、鮮血で染めたかのように赤く色付き、血に塗れたその姿は白夜叉を思い出させる。
「……殺らねェのかよ」
顔の真横、視界に刀を入れたまま、高杉を睨むようにして言った。
「かかってこいっつったのは紛れもねェ…高杉、テメーだろ」
「手前こそ…一撃も出さねェじゃねェか…」
「オメーが本気で来ねェのに何で俺が殺らなきゃならねェんだ」
圧されて、傷だらけにされても高杉には自分を殺す気がない、という銀時。
「どういうつもりだ。何がしてェんだ」
何故、銀時がこんなことを言うのか。
それは斬られた場所で分かった。高杉が刀を当てた場所は、腕、脚、肩口、脇腹…。そう、着流しが紅く染まる程に出血はしても、もし殺す気があり致命傷を与えるとするならば、心臓や、内蔵のある体の中心部分を狙うのが普通だ。
銀時は高杉が何かを企んでいるとしか思えなかった。
「何を…考えてやがる」
息を切らしながらも、高杉を睨み続ける。
「…ククッ……聞きてェか?…教えてやるよ。江戸(ここ)をぶっ壊すのに…オメーを、白夜叉を使うつもりだからだ」
「へェ…」
銀時は蔑むような視線を送った。
「だから木刀じゃなく真剣を使って戦わせたってか」
その通り、高杉はそれで銀時の中の白夜叉の血を再び蘇らせようとした。紅桜を相手にする銀時の中に白夜叉を見た時からずっと、高杉はそればかりを考えていた。