11/15の日記

20:07
今日は日記じゃなくてSSです。
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『寒い』


…寒い……。

 いつもなら寝台の中は熱い程なのに、今晩は冷える。

…居ないからだ。 …人一倍体温の高いあいつが―――………。

 昨夜風呂に行ったあいつはそれきり戻っては来なかった。
 まさか、と風呂に様子を見に行き、やはり、だ。
 寂しいわけではない。
 ただあまりに突然過ぎるから驚いただけだ。
 …今夜は冷えるしな…。

 あいつのいる場所は寒くはないだろうか…。

 …向こうでも大切な者たちに囲まれて笑っているだろうか。

 あいつは他人を暖めることばかりに気を妬くから婚約者のぼくくらいは気にしてやらないとな。

 別に寂しい訳ではない。

…今夜は冷えるからだ。


【END】



『懐にあるもの』


「何を見ているんだ?母上が探していたぞ」
「…ああ、コンラートか」
 ユーリが故郷に戻って一週間が過ぎた。
 あいつはいつも突然過ぎるから馴れてはいるが、毎回のようにぼくの気付かぬ間に、というのはどうにも面白くない。
「わかった、今行く」
 コンラートの質問には答えずに、右手に持ったものを丁寧に高貴な紫の布で包み直し、軍服の内ポケットにしまって立ち上がると、コンラートの立つこの部屋の扉まで歩いて、ふと思い当たる。
「なぜぼくがユーリの部屋にいるとわかったんだ」
 銀の星を散らした茶色の瞳がぼくを一瞬見たが、先に部屋を出て行ってしまった。
 今の笑ったように眇めた瞳が妙に癪に触る。
 ふん。ぼくが泣いているとでも思ったか。
「コンラート、お前は勘違いをしているぞ」
 回廊を振り返らず先をゆったりと歩く背中に、ぼくも合わせてゆったりと歩きながら言葉を繋げる。
「ぼくが考えていたのはユーリが故郷に帰ったことではなくて、次に戻るまでに自分のすべき事、だ」
「………お前は凄いな」
 コンラートが振り返ってまた笑った。今度は瞳だけではなく歯を見せて。
「…俺は前者だからな」
 ふん、どこまで本当かはどうでもいい。
 あいつはこの国の王なのだから戻るのは当然じゃないか。
 勝手に自分の国を空けた薄情な婚約者に対して、その日を指折り数えてメソメソなんてしてやるものか。
「ぼくはこれでも忙しいんだ」
 あいつが戻るまでに剣の腕、魔術の一つでも磨かねばならないからな。
 軍服の懐が少し熱く反応したような気がして、布越しに右手でそっと撫でてみる。
「それで懐には何を…?」
「夫婦だけの秘密だ」
 コンラートは、そうか、と一言返事をして、何事も無かったかのように踵を返すと、母上の部屋のある方向へまたゆったりと歩きだした。
 顔は見えないが、また銀の星を宿した瞳を眇めて笑っているのだろう。
 こいつの表情などどうでもいいが、一応兄だしな。
 そして、ぼくもその後をゆったりと歩いた。
 そろそろ食べないと好意を無駄にしてしまうと、胸ポケットに入れた手作りの焼き菓子にまた右手を当ててみながら。


【END】


<あとがき?>
ちなみに焼き菓子はクッキーで、陛下がエーフェに教えてもらいながらグレタと作ったんだと思います(笑)
そして、もう湿気ってるんじゃないかな(苦笑)…は言わない約束で!
有利が自分の為に作ってくれたと思うと閣下はもったいなくて食べれないんだよ(*ノノ)

埃を被ってどっかに埋もれていたのをだいぶ直して持ってきたSSです。(どっか?/笑)

テマリさんの『〜自由業』のお陰で最近ヴォルユ熱が復活して、感覚を取り戻そうと思ったんですがどうですかね…。

久し振りにASUKAを買おうと思ってるのにまだ買えず。
無くなる前に買わなきゃっ!

◆拍手ちょこちょこ打って下さりありがとうございます!
寒くなってきたので皆様お身体お労り下さい。


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