短編小説@
□30cmの距離
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彼の身長、178cm。
私の身長、148cm。
差は30cm。
「侑ちゃ〜〜ん!」
廊下を歩いていると、侑ちゃんの背中が見えた。
「お、翼やん」
私は振り向いた彼の胸に飛び込む。
「侑ちゃん♪」
「今日はご機嫌やね」
侑ちゃんの声に、私は当初の目的を思い出す。
「あ、そうそう侑ちゃん!大変なのです!」
「へ?大変?」
一度、侑ちゃんから離れて彼の顔を見上げる。
「さっきオオトリくんにお姫様抱っこしてもったの!!」
たっぷり5秒。
我に返った侑ちゃんが顔色を変えて、私の肩を掴む。
「オオトリって、あの鳳か!?」
「え、あ…うん、そうだよ…この学校に鳳って一人だよね、テニス部の」
「お、お姫様抱っこ…」
「そう!お姫様抱っこだよ!どうしよう!」
ついさっき、宍戸くんと鳳くんに会った。
そのまま何となく世間話。
そして、かるい冗談でお姫様抱っこをしてもらうことになった…。
出来てしまったのだ…お姫様抱っこ…を。
「どうしよう!侑ちゃん!」
「………」
「侑ちゃん?」