短編小説@

□30cmの距離
1ページ/4ページ


彼の身長、178cm。

私の身長、148cm。



差は30cm。



「侑ちゃ〜〜ん!」



廊下を歩いていると、侑ちゃんの背中が見えた。

「お、翼やん」

私は振り向いた彼の胸に飛び込む。

「侑ちゃん♪」

「今日はご機嫌やね」

侑ちゃんの声に、私は当初の目的を思い出す。

「あ、そうそう侑ちゃん!大変なのです!」

「へ?大変?」

一度、侑ちゃんから離れて彼の顔を見上げる。





「さっきオオトリくんにお姫様抱っこしてもったの!!」





たっぷり5秒。

我に返った侑ちゃんが顔色を変えて、私の肩を掴む。

「オオトリって、あの鳳か!?」

「え、あ…うん、そうだよ…この学校に鳳って一人だよね、テニス部の」

「お、お姫様抱っこ…」

「そう!お姫様抱っこだよ!どうしよう!」



ついさっき、宍戸くんと鳳くんに会った。

そのまま何となく世間話。

そして、かるい冗談でお姫様抱っこをしてもらうことになった…。



出来てしまったのだ…お姫様抱っこ…を。



「どうしよう!侑ちゃん!」



「………」




「侑ちゃん?」



 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ