黒バス。

□来年も、また。
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夏と言えば夏祭り。テツに一緒にお祭りに行こうと誘われた。珍しく、他の奴らは誘わず俺と二人きりらしい。何で他の奴らは誘わず俺と二人きりなのか聞いてみたら
「黄瀬君は周りに女の子が集まってきて面倒ですし、緑間君は苦手です。紫原君は屋台にはお菓子がないので不機嫌になりそうですし、赤司君は怖いので。でもどうせなら祭りには行きたいので相棒の青峰君だけでもと思い誘ってみました」
らしい。
テツと俺はただの相棒だ。テツはそう思っているかもしれないが俺は違う。俺はテツが好きだ。しかも、友情とかの好きじゃなく、恋愛感情の好きだ。いつから好きになったかはわからない。気付いたら好きになっていて、一度意識し始めたら意識せずにはいられなくなっていた。この前も一日中テツのことばかり見てたら一日が終わっていた。
今日もこうして柄にもなく楽しみで待ち合わせ時間より一時間も前についてしまった。

「すみません、遅くなりました」

物思いに耽っていれば後ろから声が掛かる。相手を確認しなくてもわかる。今にも消えてしまいそうな、それでもどこか力強く透き通る声、テツだ。
振り返ってテツを見る。
いつもとは少しだけ違う雰囲気。そうだ、夏祭りと言えば、
浴衣…だ。
テツは浴衣を着ていた。藍色の浴衣がいつもよりテツの存在を際立たせていた。何より、浴衣の襟元から少し見える白い肌をいやらしく思った。ダメだ、意識したらそこにしか目線がいかない。誤魔化すように乱暴に頭を撫でる。

「い、いや、俺が早く来すぎただけだ。お前は遅れてねぇよ」
「ん…そうでしたか」
「おう。そんじゃ、行こうぜ」

先々に歩き始める。テツが後をついてきているのがわかる。あまり離れないように距離感を保ちながらテツの歩幅を合わせながら歩く。ようやく屋台の方に着く。当たり前のことながら屋台の方は人がたくさんではぐれかねない。下心がないと言えば嘘になるがはぐれないように手を繋ごうと手を差しだそうと思ったが、

くいっ。

テツなりの対策なのか、はぐれないように俺の浴衣の裾を掴んでいた。

「…テツ……」
「はい?」

このままだと浴衣の裾が伸びてしまうと思い、名を呼べば不思議そうに首を傾げて見上げてきた。

「……何でもねぇ……」

そんな可愛らしい仕草を無意識にやってのけるテツに何もいえず、また元の方向を見る。反則だろ…。
会話もなしにしばらく歩き回っていれば、浴衣の裾を引っ張られる。


「疲れてきました……。」

この人混みとただでさえないテツの体力のせいで休憩することにした。
屋台の方を離れて近くのベンチに座らせる。

「大丈夫か、テツ?」
「はい、大丈夫です…」

少しぐったりとして言うテツに大丈夫じゃないと確信する。

「大丈夫じゃねぇだろ。何か食いたいもんあんなら買ってきてやっから」

ぐしゃぐしゃと頭を撫でながら言えば、少し考えた後、綿菓子が食べたいです、と言った。

「わかった。んじゃ、買ってくる」

言い残して綿菓子を買いに屋台の方に向かって行く。



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