テニプリ。

□キスの味
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突然だけどよ、
キスって何味?
俺?
俺だったらそんなこと聞かれてもよくわかんねぇって答えるかな。
もしかしたら、よくある例えでレモン味、なんて答えるかもしんねぇけど。
なんでいきなりそんなこと聞くのかって?
逆に俺が聞きたい。目の前にいる恋人に。
もう何度もしているというのに、改めて聞かれると案外わからないもんだよな。
わからないと言えば、今の状況だ。
いつも通り部活後の部室で仁王と他愛ない会話をしていたはずなのにそんな話になった。
"ブン太、キスってどんな味がするん?"
なんて聞かれた。
んで、ロッカーに詰め寄られ逃れられない状況。
おまけにそう言ったっきり見つめてくるだけで何にも言わねえ。これは、俺がいつまでも答えないから答え待ちってことか?
いや、でもぶっちゃけキス中に味とか味わえるほどの余裕なんかあるわけもなくって、何をどー答えればいいのかわからないわけで。そうか、よくわからねぇでいいんだな。

「いや、よくわかんねぇよ」
「ほー・・・」

思い切ってそう答えてみれば意味あり気に目を細めニヤッと笑う。
・・・コイツがニヤッと笑う時は嫌な予感しかしねぇ。

「あ、そういやさ、赤也が新しいゲーム買ったらしくて・・・」

この状況から逃れようと他の話を持ち出してみる。
だが、それは効果を表すはずもなく仁王に話を戻される。

「あんだけしといて全然味がわからんの?それなら、」

一旦言葉を切って顎を掴まれ、顔をクイッと上げられる。

「今度はじっくり味わってみるか?」
「それってどう・・・んっ!?」

言い終える前には唇が重なっていた。
そしてゆっくり舌が入れられる。
てか、キスはただ単に仁王がしたいだけなんじゃね、なんて思ってみる。
目を閉じて自分からも舌を絡めて味わってみる。
絡めるうちに、口内に違和感を感じ、そんでもって甘い味がした。それはまさしく・・・

「んん・・・・っは、ちょ・・・んぅ・・・・」

そろそろ息が続かなくなってしまい、胸板を叩いて呼吸がしたいことを意思表示する。
やけに素直に離してくれたことに関して疑問に感じながらも一気に酸素を取り込む。
呼吸を整えている俺に、仁王はまた聞いてきた。

「で、どんな味だったかの?」

今度は率直に答えられた。

「・・・・グリーンアップル味・・・」

口内のあの違和感はガムだった。
俺と会話している間もずっとガムを口の中に忍ばせていたとなるとさすがペテン師といったところか。まったく気付けなかった。
何はともあれ、グリーンアップル味。

「・・どうだ。この解答が欲しかったんだろぃ?」

確信してそう言えば、お馴染みにプリッ、なんて言われて正解だな、と安堵する。

キスの味が何かなんてまた聞かれたら俺は迷わずにこう言う。
グリーンアップル味だ。
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