Falsehood

□Situation
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ガチャリ。


誰かが部室の鍵を閉めた途端、

中の空気が一変した。




「………」


「………」




黙々と着替えていくレギュラー達。


言葉を発する人は誰一人としていない。




他の人から見たらありえない光景であろう。



いつも言い争いはしているが、基本的に仲の良いテニス部だ。



少しでも会話は弾むはず。


なのに何故会話をしないか。



理由は簡単。




嫌いな人がいるから。





嫌いな人間がいるのにそうやすやすと話をしたくない。


まさに中学生の発想である。



鍵を開けている時や、少しでも窓が開いている時、もしくは嫌いな人物がいない時はそれぞれ多少の会話はする。


しかし全員が揃うと必ずといっていい程、



このような状況になるのだ。




「………なぁ、跡部」



「何だ、宍戸」



「明日の練習、俺休むわ」



「…分った。理由は後で聞かせろ」



「わり」




会話をしても、今の宍戸と跡部の会話同様、極力長く話さない。


自分の嫌いな人物じゃなくとも、だ。



何故こうなったか、誰にもわかっていない。



彼らは、自分の嫌いな人物と手を組んだり、仲間に鳴るくらいなら。

進んで転校なりなんなりするであろう。


それほど、仲の悪い者が居るのだ。

この、


氷帝学園中等部男子硬式テニス部レギュラー達には。



しかし、そんな彼らでも、一つだけ協力していることがある。


それは、


『この関係を、周囲にバラさない事』




だから他の生徒、教師、他校生から見れば、


彼らは仲の良い集団になる。



勿論、知っている人はいない。


彼らはそう自負している。


なぜならそれほどまでに、




彼らの演技は完璧だから。



そんな事でテニス部の評判を下げる訳にはいかないし。

そんな事を知られたくもない。


だから彼らは今日も演技を続けている。



「なぁ侑士!」


「なんや岳人」


「試合、やろうぜ!」


「ダブルスか?シングルスか?」


「勿論、ダブルス!」





Situation



彼は、あの人が嫌い。

彼も、あの人が嫌い。

でも彼は、あの人が好き。

恋愛感情ではなく、ただの友人として。





(さて、)
(俺は誰が嫌いでしょう?)

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