短い妄想物語

□君の寝顔は俺のもの
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「なんでそんな怖い顔してるの?」

俺の機嫌を悪くした張本人が尋ねる。

「お前、今電車で何したかわかってるか?」

「寝てた!」

「それだけじゃねーよ」

「え、もしかしてイビキとか鼻ちょうちん作ってた?」

だったら恥ずかしー、と顔を隠すあいつ。

自分がやったことわかってないのか…

「お前は今さっきまで知らねーおっさんに思いっきりよっかかって寝てたんだよ!」

つい乱暴な言葉遣いになる。

「なんだそんだけか〜
鼻ちょうちんじゃなくてよかった」

ほっとしたような顔になるあいつ。

どこまでのーてんきなんだ。

「あのおっさん、お前によっかかられて
満更でもねー顔してたんだぞ!!
知らねー男に無防備な姿を見せるな!」

「でもあんまり寝てなくて眠かったんだもん…」

俺の気迫に押され、声が小さくなった。

「これから電車で寝るの禁止な」

「えー電車で寝るの気持ちいいのに…」

「寝ていいのは俺が隣にいるときだけだ」

「はーい」

不満そうながらも返事をするあいつ。

「ほらじゃあ学校行くぞ」

今度は優しく手を握り、電車に乗り込む。


あいつの寝顔を間近で見ていいのは俺だけなんだ。

あんな知らないおっさんに見せていいものじゃない。

ヤキモチやくなんてカッコ悪いけど
それだけあいつが好きなんだ。

座席に着くなり、
俺の肩に頭を乗せて寝始めるあいつ。

優しく前髪をすくようにさわる。

無邪気な天使みたいな顔をする。

この笑顔は俺だけがみることを許される笑顔。

そう。

他の誰にも譲らない。

あいつの隣は俺だけの特等席だから。



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