01/03の日記

10:09
函館旅行妄想の続編過去土方さん視点
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@hjok_shumari: 蝦夷に入り、既に戦況も大分悪化した頃だった。息も絶え絶えに戻った偵察隊が俺の元へと飛び込んできた。敵襲に遭い、最早と思ったまさにその時、背の高い見知らぬ男に救われたのだと彼等は言った。白髪に赤い眼のその男は、敵軍を殲滅したのち胸の刺繍を握り締め、俺の名を呼び塵と消えたのだそうだ。

@hjok_shumari: 「鯉の刺繍の服の男か」そう聞くと彼等は皆頷いた。「追って来いと言われたのだと……貴方の名を呼び跡形も無く…」それが誰かはすぐに分かった。目の前にいる軍の部下たちは会ったことのない相手だ。「新選組一番組組長…沖田総司」呟いたその名乗りに、覚えがあるのか彼等は揃ってハッとして見せた。

@hjok_shumari: 早く治して追って来いと、そう告げて手渡したあの服を翻し、鬼神の如き闘いの末に最期まで膝をつくことなく、胸の刺繍を握り締めてあいつは絶命したのだという。追って来いと俺は言った。奴の胸に刻んだ鯉はあいつを北へと上らせた。あいつと俺の間には、決して断ち切れようも無い固い絆があったのだ。

@hjok_shumari: 誰にも知られることもなく闘いばかりの日々の中で、それでも俺たちの中には確かに、誰しもに芽生える当たり前の、甘やかな恋心が存在していた。あいつは分かっていただろうか…追える体でない事を知り、これが別れと知りながら尚、おまえ一人が恋しけれと、女々しい想いを胸に縫い留めた俺の、未練を。

@hjok_shumari: ただ一本の髪さえ遺らぬその壮絶な死に様を、誰より捻くれ誰より忠実だったおまえのその凄絶なまでの一途な愛を、欠片一つも溢すことなくこの体で受け止めよう。そして同じように俺もまた、おまえという唯一人に、欠片も残さず持ち得る全てを捧げ切るとここに誓おう。
総司、おまえは約束を果たした。

@hjok_shumari: 背を向けた俺の足元に部下の一人が跪き、血泥に塗れた一振りの刀を頭を下げて高く掲げる。震える指でそれを受け取れば、彼等は何も発することなく俺の前から立ち去った。総司、おまえは約束を果たした。俺の元へと辿り着いた。此れ程心強いことがあろうか。俺にはもう一つの未練さえも残ってはいない。

@hjok_shumari: #土沖
先日の函館旅行妄想ついのべの、函館戦争時の土方さん側をというリクエストがあったので。沖田組長の刀を握り締めた副長はきっと、刃こぼれもそのままにそれを帯び続けたんでしょう。だから兼定は市村くんに託して逃がしたんでしょうねっていう

先日の函館旅行妄想の函館戦争時の土方さん側をとのリクエストありがとうございました!
土方さん側の視点ではまだ何も考えていなかったのですが、自分で創り出すというよりきっとこうだったんだろうと想像するのはすごく楽しかったです\(^o^)/



☆コメント☆
[蓉姫] 01-03 21:11 削除
朱鞠さま
「総司、おまえは約束を果たした。」
涙の函館妄想、本当にありがとうございました。
リクエストしてよかったです。
おりしも今日は鳥羽伏見の戦いの日。
どれほど総司さんは歳三さまの隣でともに戦いたかったことでしょうね。守護神として。
でも、こうして追ってきたのですもの。
最高の絆ですわよね。
朱鞠さま、感謝、です。
蓉姫

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