BL短編の小部屋

□篭の鳥
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ポケットで携帯が震え、俺は数学教師の目を盗み、急いで教科書で盾を造ったその陰で、ディスプレイ画面をチェックした。

受信メールを告げる文字に、体中の血が沸き立ち、メールマークを押す指が、バカみたいに震える。

Frm――高橋……中学の頃の友人の名が表示され、内容を開く事もせずに、そのまま携帯を閉じた。


――あの人じゃない……

そう判った瞬間、抉る様な痛みが又胸を突き刺す。

こうして俺の心があの人にがんじがらめにされている間も、彼は仕事に打ち込んでいるんだ。

この1ヶ月、俺のこと等ただの一瞬すら、思い出してもいないかもしれない。

仕事、仕事、仕事。

たった一時も、心の隙を分けてはくれない。

15も年の離れたガキなんて……本気で相手にする訳ない。

ただのオモチャ……飽きたら捨てられるだけ。

――もしかしたら……もうとっくに飽きたのかもしれない。

認めるのが怖いと思う一方で、心のどこかでは、初めから諦めてた気もする。

住む世界が違う……

言葉にしてしまえば、なんて陳腐で、軽々しいんだ。

――なのに……意識した途端、それはモノすごい早さでもって、俺の細胞ごと全部を蝕んでいく。
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