BL短編の小部屋
□だって、ずっといっしょ。続編
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いつからだろう。
キミに追いつきたくて、気が付けば息を切らし、無理をするようになったのは?
キミの大きな背中は、いつも少しだけ手の届かないところにあったね。
『ほんのちょっとの距離』
ドアの引き戸をちょっとだけ開けて中を覗き込み、見知った姿をくまなく探す。
………いない?
幾つものブレザーが思い思いに散らばる教室中をもう1回端から順に目で追って見たけど、やっぱり探してた当人は見当たらなくて、仕方なく諦め掛けていたとこに、背後から軽く肩を叩かれた。
「西田くん」
振り向いたそこには、何度か会話を交わした事のある、日向のクラスメートがにこにこしながら立っていた。
「どうした〜?春野」
どことなくのほほんとした憎めない感じの西田くんは、日向とは正反対ながら、何故かウマが合うみたいだ。
「うん…俺保健の教科書忘れちゃったから、日向に借りようと思って……あいついる?」
「あぁ、今担任と進路指導室に立てこもり中。俺ので良かったら貸すよ」
「あ……ありがと」
「待ってろ〜」
踊る様な足取りで教室へと消えた西田くんは、やっぱり戻って来る時も踊る様な軽い足取りだった。
「はい、これ。落書きとかいっぱいしてあるけど、アートだから気にすんなよぉ」
西田くんは俺に教科書を差し出すと、どこまで本気か判らない顔して言う。
「あのさ、日向……なんか悪い事でもしたの?」
「あん?悪い事ぉ?」
「だって、担任の先生と進路指導室って?」
隠してるタバコが見つかったとか、カンニングがバレたとか。進路指導室=そういうの、って付き物だと思うから。
「ないない。あいつに限って悪い事なんてないよ。曲がった事とか嫌うタイプじゃん?」
だよね、内心ちょぴっとホッとして、じゃあなんで?と問い掛けると、西田くんは何故だか判らないけどヒソヒソ声で俺に耳打ちする。
「ほら、あいつ大学行くか専学行くか悩んでたろ?その事で担任とミィーティングしてんだよ」
えっ?
突然の言葉に意味が判らず西田くんを見つめると、そんな俺を彼も不思議に思ったのだろう、逆にキョトンと見返されてしまった。
「……あ…ごめん、引き止めて。それじゃ、教科書借りてくね」
それだけ早口に言って、その場から逃げる様に立ち去った。