BL短編の小部屋

□彼依存症
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あなたには俺が必要ですか?

あなたを見てると、いつもそう思う。

俺がいなくても、あなたは普通に息をする。

物を食べ、笑い、心は安らぎ、穏やかに眠る。

あなたといない俺は、こんなにも空っぽなのに………

あなたは俺がいなくても、きっと平気。











――会いたい……

匡(たすく)さんにメールをしたのは、やっと陽射しが輝き出した、昼過ぎの事だった。

――9時頃になるから、部屋で待ってろ。

――はい。




どうでもいい講義を抜け出し、大学から徒歩10分の自分のアパートに戻った。


さて、彼に会いに行く迄の時間をどう潰そうか。

丸一日干しっ放しだった大量の洗濯物を取り込み、Tシャツ3枚を畳んだところで、早くも飽きてしまう。

何気なくテレビを着けても、ハイテンションでがなりたてる白々しい情報番組には入り込めず、すぐにテレビを消した。

彼がいない時の俺はいつもこうだ。
何をやってもすぐに飽きてしまい、意味のない時間が延々続く。

いや……続くんじゃなく、時間は止まっているのかもしれない。

全身でもって彼に依存している自分。
匡さんにしたら、どれだけ重いだろう。

2こ上の匡さんは、今年の春に大学を卒業した。

社会人と大学生。

俺は1人取り残された気がして、半狂乱で暴れた。

『もう俺達の関係も全部終りだ。あんたは仕事が忙しいって俺に会ってくれなくなって、そのうち可愛い女の子と付き合ったりするんだ。俺が押し掛けても迷惑そうにあんたこう言う。優哉との事は若げの至りってヤツだ、後悔してる、ってね』

酒の勢いに任せ泣き喚く俺に、匡さんはくっくと喉の奥で息を鳴らし笑った。

『凄まじい想像力だな。心理カウンセラーになるより、作家の方が向いてるんじゃないのか?』

ツボにはまるジョークに気を良くした時みたいに、彼は実に楽しそうに、にこにこと。

『ひどい人。さんざん抱いて美味しい思いして……ヤリ捨てかよ』

昼ドラ並の陳腐な台詞で彼をなじり、その後はドロっドロに縋り着いた。

『俺のこと……捨てないでよ。匡さんじゃないとダメなんだもん』

今思えば、情け無いと判る。だけどあの時は必死で。彼を繋ぎ止める為なら自殺未遂だって迷わずやっていたと思う。
――バカな事しなくて良かった。
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