BL短編の小部屋
□存在理由
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『どうして毎日ここに来るの?』
そう訊けば、必ずいつも同じ答えが返ってくる。
『センセーがここに居るから』
自信満々に、堂々と。
『クソ面白くもない学校に来んのも、センセーがいるからだよ』
センセーがいるから、息をして…
センセーがいるから、生きててもいいって思える……
俺の存在理由はセンセーだけ。
真っ直ぐな君は、真っ直ぐに俺を見て、今日も同じ言葉を囁く。
昼の時間を告げるチャイムが鳴って、6分後に決まってドアをノックする音が聞こえる。
毎日毎日毎日毎日……
トントン……
「はーい、どうぞ」
俺はピアノの華奢な椅子に座ったままで、見なくても判るその人に返事を返す。
「センセー、会いたかったぁ〜〜」
そうして現われるのは天を目指して真っ直ぐ伸びた、向日葵みたいなこの生徒。
――遊佐 大地
「遊佐くん……また来たの?」
「だって〜〜センセーに会えんの、昼しかないだろ。どーせなら、音楽教師なんかじゃなく、数学教師になってくれれば良かったのに……そしたら毎日授業で会えたじゃん」
モデルみたいに恵まれた体型の、すこぶる二枚目な男子生徒は、笑うと目元が少しだけ下がって、益々魅力的になる。
「そしたらちょっとは、数学も好きになれたかも」
一年中日焼けした顔でニッカと笑うその顔は、俺といる時だけ子供みたいになってしまうから、いつだってチクチクとこの胸は刺されてしまう。
「いろんなセンセに同じ事言ってるんだろ?君」
窓際に行き、部屋中のカーテンを閉める。
「あんま苛めんなよ。センセ……会いたかった」
いつの間にか近付いた遊佐が、後ろから覆い被さる様にやんわり俺を抱き、耳元に囁いた。