BL短編の小部屋
□最悪な男
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瀬奈は俺の中に続け様3度程吐き出した後、ベッド脇の小さな丸いテーブルに置かれた煙草に火を着けた。
終わってすぐ、いつもこいつはこうして俺に背を向け、気持ち良さそうに煙草をふかすんだ。
いい具合に筋肉の盛り上がったその背中の向こうから、白い煙りがゆらゆらと天井に向かい上がっていく。
「未成年のくせに……煙草吸ってんじゃーねよ」
苛立ち紛れに俺は瀬奈を睨み付けた。
瀬奈の大きな、うっすら汗の浮かぶ背中を見ながら、俺が泣きたくなるのも毎度の事で。
だから、微かに声が震えた事に、もしかしたら気付いてくれるんじゃないか……なんて期待しながら言ってみた。
「なぁーに?随分突っ掛かるじゃん。中野、もしかして足んなかった?」
首だけニョキッと振り返り、ニヤつきながら俺を見た瀬奈に溜め息が洩れた。
「違うよ」
ダメだ。
全然こいつは判ってない。
俺が泣き出したい気持ちでいる事も、
その原因が瀬奈自身にある事も、
ナニひとつ気付いていないんだ。
「せな……」
おまえにとって俺ってなんなの?
そんな事、怖くて聞ける筈がない。
「なんだよ中野?もったいぶってないで言えよ」
もったいぶってなんかねーよ……
「おまえってさ……えっちの才能だけはあんのな……」
そんなどうでもいい事を誤魔化し半分で返すと、それに気を良くしたのか、瀬奈がにこにこ笑う。
白い歯がヌッと覗いて、厚めの唇が半月型に開いた。
「だろ?試して正解だっただろ?」
―――まぁな……
いい加減自棄になって俺は頷いた。
瀬奈と初めて関係を持ったのは半年前だ。
たかだか半年の間に、俺達はアホみたいにやりまくった。
『あいつ絶対後悔するぜ。この歳でこんな上手い男なんてそうはいいのにさ』
『へぇー瀬奈ってそんなに上手いんだ?』
『かなりな。おまえに見せらんないのが残念だよ……って見せてやろっか?』
『はぁぁ?』
『だから、見せてやるよ』
そうして何故かどっちが上になるかジャンケンで決めた俺等は、次の日瀬奈の部屋で結ばれた。