BLシリーズの小部屋
□キミを好きな理由 もり聖イラスト付
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「おまえ、まだ帰んないの?」
本から目を上げ、聖ちゃんが俺に言った。
ベッド脇の目覚まし時計は、無情にも6時を指している。
「そろそろ……帰ります」
俺が言った途端、彼はニコニコ笑う。その顔は物凄く綺麗だけど、そこから出る言葉はいつも、信じられないくらい残酷なんだ。
「おぅ。帰れ帰れ。さっさと帰れ」
ほらね。
俺はいつだって、こんなに離れるのが辛いのに。
「それじゃ、お邪魔しました」
ホントはキスのひとつでもしたいけど、聖ちゃんがそんな事を許してくれるはずもなく、俺はのそりと立ち上がった。
「もり、明日は来るな」
すると、突然言われた。
「なんで?」
毎日学校帰りに彼の部屋へ寄るのが、俺の日課なのに。
聖ちゃんだって文句言いながらも、ちゃんと玄関の鍵を開けておいてくれてる。
「来たいなら来てもいいが、俺はいないぞ」
「だから、何でですか?」
俺の言葉に、明らかに聖ちゃんがムッとしたのが判った。
「出かけるからいないんだ。それとも俺は、おまえのお守にずぅっとここにいなきゃなんないのか?」
「いや、そんな事ないッス」
ギロリと睨むその目はゾクゾクする程綺麗で、やっぱり俺は見惚れてしまう。
「ないッスけど……どこ行くの?教えて欲しいな」
「合コン」
天使みたいに笑って、聖ちゃんはまたもひどい事を言う。
「聖ちゃん、合コン行くの?」
酒も弱いし、大勢で騒ぐのだって苦手な聖ちゃんが、合コン?
性格から考えて、そこまでして彼女を作りに行くなんて有り得ないし……第一、天下の聖ちゃんが女に困る筈ない。
男女問わず彼に言い寄ってくる奴は星の数程いるんだから。
「人数合わせに呼ばれた。奢ってくれるって言うし、しつこいから」
「合コンて女も来るよね?」
「当たり前だろ。野郎同士で合コンしてどーすんだ」
おまえ馬鹿か、と聖ちゃんが鼻で笑う。
「どうせあれだよ。すっごいかっこいい奴が来るからとか言って、女集めてんでしょ?そいつら。聖ちゃんダシに使われてるんだよ……」
行くのやめてよ……言いたい。
言ったら、怒るだろうか……なんて考えるまでもない。
俺は只の幼馴染だから。
彼を縛る権利なんて俺にはない。