BLシリーズの小部屋
□もり&聖シリーズ 絶対言わない
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朝起きた時から、何となくおかしいとは思っていた。
元々寝起きはあまり良く無いけど、それとは別の違和感を感じ、昼を過ぎた辺りから、本格的にピリピリと身体中の皮膚が痛み始めた。
俗に言う、悪寒ってヤツか?
早々に講義を抜け出し、やっとの思いで家に辿り着いた頃には、半分意識が飛んでる状態で、鍵を開け玄関先に倒れ込んだ。
……帰りは遅くなるから、ピザでもとって食べててね……
今朝、母親に言われた言葉が、ボンヤリと浮かんできた。
ヤバイって――
頭を誰かに鷲掴みにされ、グルグルと振り回されている気分だった。
方向感覚を失い、意識すらなくなり掛けた瞬間、身体がやっと楽になる。
なんだ……最初からこうすれば良かった……
そんな事を考えながら、俺の意識はプツリとそこで途切れた。
どのくらい、そうしていただろう?
どこか遠くで、聞き慣れた電子音が聞こえる。
やがてその音は次第に音量を増し、尻の方で微かな振動を感じた。
携帯?
そう思い付くまで数秒かかり、更に数秒かけて尻ポケットから携帯を取り出す。
通話ボタンを押し、耳に当てると……
「聖(せい)ちゃん?今どこ?」
脳天気に明るい声が聞こえて来た。
もりだ。
守人(もりひと)縮めて、もり。
十年来の幼馴染みで、隣りの家に住むもりは、バカの一つ覚えみたいに、日々俺に好きだと繰り返す。
三つも年下のくせに、俺よりずっと大きくて、逞しくて…何でも出来てしまう、生意気な野郎だ。
「どこに居んの?」
「玄……関……」
声を出すのも大儀だった。
「ナニ?よく聞こえないよ」
当たり前だ、バカ。
こっちは喋るのも辛いんだよ……
本当なら、そう怒鳴り付けてやりたい処だけど、今はそれすら無理そうだ。
「もり……早く来い……今……すぐ」
途切れ途切れの声は、ちゃんともりに届いただろうか?
……そして俺は、もう一度意識を手放していた。