BLシリーズの小部屋
□もり&聖シリーズ 傷跡
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いつも俺の名前を呼んで、俺を捜して。
どこにいても、おまえだけは絶対に、俺を捜し出して欲しい――
傷跡
「聖ちゃんってさぁ……」
そこまで言って、思わせぶりにもりが黙り込む。
はぁ〜〜
生意気に溜め息なんか付きやがった。
腹が立つから、続きを急かさず、無言で手元の文庫本に視線を戻してやる。
「聖ちゃんって……なんでそんなに綺麗なんだろ……」
俺の反応はお構いなしで、勝手に喋り、又黙る。
はぁ〜〜
そして、2度目の溜め息。
「うっせーよ」
「あっ……すみません」
ガリガリと頭を掻き、薄く笑う、もり。
男らしい顔立ちもその出で立ちも、やけに堂々としているのに、どういう訳かこいつは俺の前でだけ、巨大なガキに成り下がる。
クサい台詞を吐いてニッカと笑い、聖ちゃん聖ちゃん……俺に纏わりつく。
「おまえって、俺の顔好きなんだ?」
「顔?そりゃあ、大好きだよ」
得意満面の笑みを浮かべ、当然みたいな顔して答えたもりが、理解不能だ。
「でもさぁ、正確に言うと、顔も好き、なんですけど。俺が聖ちゃんだったら、鏡ばっか見てそぉ。自分見て欲情したりして……」
二ヒヒ……
気色悪い事を言いながら、最悪の顔してニヤけてるバカ大男が1人。
「顔も好き、全部好き……」
「ああ、そうですか。死ぬまで言ってろ」
「は〜〜い♪」
でっかい右手を上げ、幸せそうなもりに、こいつって絶対悩みねーな……確信を持つ。
お生憎様。
おまえが大好きなその顔が、俺は大っっ嫌いなんだよ。
『まぁ〜〜女の子みたい』
初対面で俺が男だと知った時の相手の反応は、ほぼ8割型がこれだった。
挙げ句、
『男にしておくのが勿体ない』
なんて事を、さらっと付け足しやがって。
ハタチを過ぎた今では、さすがに女に間違われる事も、面と向かってそんな事を言う奴ももういないけど……。
実に21年を費やし、俺が思う以上に世間には物好きな奴等が多い……その事実を学ばされてきた。