BLシリーズの小部屋
□もり&聖シリーズ 策士
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『映画でも観て帰んない?』
そう言ったのはもりだった。
『デートみたいで、たまにはいいでしょ?』
映画=デート……その発想は判らないが、元々映画は嫌いじゃないし、久しぶりにいいかなと、俺ももりの言葉にあっさり同意した。
………今考えれば、それがそもそもの間違いだったなんて―――
眠けを誘う音楽と、流れるようなフランス語、クラシックなセピア調の映像がさっきから延々と続いている。
………失敗した。
単調過ぎる内容に俺は正直辟易していた。
一瞬映像の流れで明るくなった隙に覗いた時計は、クライマックス迄たっぷり1時間以上もある事を冷酷に示している。
「なぁ……もり、これおもしれー?」
絶対寝てると踏んで見た隣りの大男は、意外な事にスクリーンを凝視していたから、こっそり耳打ちし問い掛けてみた。
映画の中では軽いベッドシーンが流れている。
ジャンルがラブストーリーだけあって、半分もいかないうちに何度かその手のシーンが出て来ていた。
薄い白い布にくるまり抱き合い、幾度となくキスを交わす金髪の男女。
「もり?もしかしておまえ気に入ったの?」
押し殺した声で繰り返し尋ねると、ハッとしたようにもりが俺を見た。
曖昧に首を振るもり。
変な奴。
はっきりしないもりの態度に疑問を抱きながらも、一応スクリーンに視線を戻した。
あと何分だろう?
確かめた時間はさっきから10分しか進んでいない。
眠みぃー。
夕べは隣りのバカ男のせいで、あんまり寝ていなかったのを思い出す。
『もう1回……しない?』
遠慮がちに言う割に、けっこう強引なもり。
結局その後『もう1回』は何度続いたんだ?
こいつ高校生だから。と、受け入れた俺も俺だから、お互い様か。
俺は異国の言葉を子守歌に目を閉じた。
ガサガサと隣りから聞こえた音に目を開くと、もりが上着を脱いでいた。
「おまえ暑いの?俺寒いけど」
通路側に座った俺は冷房の風がもろに当たって、ずっと肌寒さを感じていた。
「上着膝に掛けたら?」
「サンキュー」
言われ素直にそれを足に掛ける。
あったけ〜〜
これで気持ち良く寝れる。
そして再び目を閉じた。