その他

□リンダキューブアゲイン そのA
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 パラサイド。ならず者達が住むこの町に人々はあまり寄りつかない。リンダの父であるヒュームは、4年前にアンと離婚して以来ここに住んでいる。
「ジャンクパレスって、ここ?」
「ああ。一度入ったら出られない奴も多い、離れるなよ」
「わかった」
 ケンとリンダが中に入る。ならず者達の視線が一気にケン達に向けられる。ある者はリンダを見て笑い、ある者はナイフをベロリと嘗める。
「……ケン」
「大丈夫。行き先が分かればいなくなるよ」
 ケンの言うとおり、ヒュームの部屋の前に来ると、ならず者達は舌打ちをし、どこかへと去ってしまう。
 全員いなくなったのを確認し、ケンが扉を開ける。
 大きなベッドに、大男が横になっている。こちらに気が付き、大男が上体を起こす。
「おおケン! 来てくれたか! 久しぶりだな」
「はい。お久しぶりです」
「えーっと、後ろのお嬢さんはレンジャー隊の同僚かい?」
「ヒュームさん、よく見てよ」
「?」
 ヒュームが目を皿の様にし、リンダをジッと見つめる。
「おいおいおい! よく見たらリンダじゃねえか! どうしたんだその格好は!」
「え、えっとね」
「ははん、ベンの入れ知恵だろ? 人を喰ったような小細工はあのタヌキの十八番だ。ハハハ、痛てて……懐かしいな」
 ヒュームが懐かしそうに目を細める。
「ところで、今日足を運んでもらったのは他でもない。実はリンダをおまえの家に置いてきたのは俺なんだ。他に思いつかなくてな」
「本当ですか、ヒュームさん」
「ああ。あの事件のことはネオケニア全土に広まったからな。娘が人を殺したなんて馬鹿な報道を聞いていても立ってもいられなくなったのよ。確認のためにホスピコへ向かう途中で、変なサンタがリンダを連れているのを見つけてよ。奪い返したのはいいんだが、腹にきついのを一発もらってこのザマってわけさ」
 腹部に巻いた包帯を指さし、ヒュームが顔を顰める。
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