オリジナルNovel

□ATONEMENT
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第一章 二人の旅人と怯える町

 ファミナスと呼ばれる大陸の北に、アルディアという町がある。
 ここは果物がよく取れ、ジャムやワインなどの加工物で成り立っている町だ。
 その町を目指して、若い二人の旅人がアルディアへと続く町を歩いていた。
「スィン、ちょっと待って」
 呼び止められ、スィンと呼ばれた旅人が振り返る。
 銀色の瞳と白磁めいた肌以外、髪の毛と衣装が黒一色のスィンは、背丈こそ低いものの、控えめに言ってもかなりの美形の部類に入る。
「どうしたの、イリア」
 イリア、と呼ばれた旅人は、翡翠色の瞳にまっすぐな金髪の髪、白と水色を基調とした服を着ており、スィンと比べると少し見劣りしてしまうが、イリアの方も十分美人の部類に入る。
「どうしたの、じゃなくて、もうすぐ日が暮れようとしているんだけど」
 イリアが地平線の彼方へと沈もうとしている夕日を指さす。暗くなってからでは野宿の用意は出来ないので、今から野宿の用意をした方がいいという無言の主張だ。
「その必要は無いよ。もう町は見えているよ」
 スィンが前方を指さす。けれど、スィンが言う町という物は影も形も見あたらない。
「がんばって歩けば日が落ちた頃にはたどり着く。それでも野宿をする?」
 微笑みながら訪ね、イリアが額に手を当てる。
「……スィンが言えば、そこに町はあるのよね」
野宿をするのと、夜まで歩いて宿屋で休む、どちらがいいか。普通に考えれば答えは決まっている。
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