オリジナルNovel
□ATONEMENT2
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第一章 いつか見た光景
冷たい檻の中に、わたしは居た。
暗くて、何の音も聞こえない。闇だけが支配していた檻の中に。
けれど、隣の檻にはお姉ちゃんが居た。だからわたしは寂しくなんてなかった。
わたしより5つも上のお姉ちゃんは、まっすぐな金髪と、翡翠の瞳がとても綺麗で、噂を聞きつけて一目見に来ようという人が村をひっきりなしに訪れたこともあった。
それに比べて、わたしはお姉ちゃんと似ても似つかなかった。髪はくせっけのある茶色で、目は同じだったけれど、並んで歩いても姉妹とは思われなかった。
わたしも、いつかお姉ちゃんのようになりたいと言った。
その度に、お姉ちゃんにいつもこう言われた。
「あなたはわたしとは違うでしょ? あなたもいつかわたしより綺麗な女になるわよ」
本当? って訪ねると、柔らかい笑顔でお姉ちゃんは答える。
「ええ。もちろんよ、イリア」
最後に、お姉ちゃんがそっとわたしを抱きしめてくれる。
でも、そのお姉ちゃんは、もうこの世にはいない。