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□.hack//prayer〜外伝〜
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chapter.1 ハルカ


 わたしこと、松波春夏がThe Worldと出会ったのは、アーク達と出会う四年前。

 中学生の時に親友の美穂からThe Worldを教えてもらった。The Worldとは、C.C.社が作ったオンラインゲームのこと。日本だけじゃなく、海外にまでプレイヤーがいるみたいで、その人気は計り知れない。美穂は楽しいからやってみろ、と言い続けるので、その熱意に負けてわたしはThe Worldをやってみることにした。

 オンラインゲームということで、プレイヤーはPCという自分の分身のようなものをこのゲームに作り、他のPCとコミュニケーションを取ったり、モンスターと戦ったりする。つまり、このPCっていうのが一番重要なのよね。

 髪、肌、目、顔、と言った様々なパーツの中から気に入ったものを選び、PCを作成していく。最後は職業と名前。職業と言われても、こんなにたくさんあるのかぁ、どれにしようか迷うな……。

 しばらく考えて、剣士のところをクリックする。一番わかりやすそうだから、という理由だけれど、そういうのがよかったりするのよね、うん。

 最後は名前ね、なんて名前にしよう。いままでRPGとかそういったゲームはしてこなかったから、名前なんてよくわからない……いいや、自分の名前を入力しよう。

 そうして、この世界にわたしのPC「ハルカ」が誕生した。

 真っ白な光が無くなり、目の前に広がるのは夕焼け空と赤く染まった街並み、そして穏やかな音楽。一瞬、ここがどこなのか戸惑ってしまった。こ、これがゲームの中なの?

「待っていたよ、春夏」

 名前を呼ばれ、わたしは振り返る。そこに立っていたのは銀色の髪を持つちょっと表情のきつい女性PC。でも、わたしの名前を呼んだっていうことは……。

「美穂?!」

「そうだよ。こっちじゃシベルっていう名前だから、そっちで呼んでね?」

「う、うん。わたしもハルカって呼んでね」

 シベルは簡単に操作方法を教えてくれて、そのあとこの町、マク・アヌのことを教えてくれる。

 カオスゲートのある場所から階段を降りていくと町並みがよく見える。お店で買い物をしているPC、町の真ん中にある橋でおしゃべりをしているPC、とにかくたくさんのPCに溢れていた。

「ふわぁ、凄いね。本当にここってゲームの中なの?」

「当たり前じゃない。まあ、確かにこの世界は現実のような味を持っているけれどね」

 景色を眺めているとシベルに笑われた。The Worldの景色に見とれる人は大抵が初心者で、バカにされる、と。そりゃ初めての人はこの光景にびっくりするから当たり前じゃない。

「さて、操作に慣れたところでさっそくフィールドに行ってみようか」

「フィールド?」

「さっき行ったでしょ? ここはタウン。The Worldではカオスゲートを通ってフィールドに行き、そこにあるダンジョンの最奥にある宝箱を取って帰ってくるって」

「ああ、そういえばそうだったね」

 シベルの後ろをついていき、カオスゲート前でシベルはわたしのレベルに合わせたフィールドを設定してくれる。すぐに光がわたし達を包み、光が無くなるとそこは一面雪景色だった。

「うわ、ここも凄いね……」

「フィールドは、草原とか雪原があって、雨が降っていたり雪が降っていたりするんだ。さあ、まずはダンジョンを探すよ」

 景色に見とれていたわたしはすぐにシベルを追いかけ、二人でダンジョンへと向かう。

 モンスターやダンジョン攻略をしている間に、わたしはこのThe Worldが大好きになっていった。
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