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□.hack//G.U. crusade
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プロローグ
「新しいThe Worldがようやく完成したね」
暗い暗闇の中、少年の声が響く。その近くにはいくつかの人影らしきものがあるが、人数は確認できない。
「これで僕の考えていることが実行できる。そのためには役者をそろえないといけないね」
少年はゆっくりと後ろを振り返る。屑データをひも状にしたもので手足を縛られた女性が横になり、女性は少年が振り向いたのを見て顔を上げる。
「せっかく古い世界から君を助けて、知らなかったことも教えてあげたんだ。これからどうなるかわかっているよね?」
「……」
「君はこの戦いで彼らのキングとなる。君が倒されればこの戦いは僕の勝ち、逆に僕が倒されれば君達の勝ち。ルールはもう確認したよね?」
「……アーク達を巻き込んで、あなたは何をする気なの?」
「改変さ。アウラと表裏の関係である僕がこの世界を変える。アウラがいなくなったこの世界は酷く不安定だから、僕が新しい神になる。
でも、君がいるとそれができない。君はアウラが再誕した時に生まれた存在で、もう一人のアウラと言ってもいいかもしれない。
つまり、君が存在していると、僕はいつまでも表舞台に出ることはできないんだ」
「……」
「チェスっていうゲームはわかる? あれは白と黒に塗り分けられたキングを奪うゲームで、キングが取られた時点で勝負は終わりになる。だから、キングを敵に取られないために、キングを守るたくさんの駒が存在している」
「アーク達に、それをやらせようっていうの?」
「そういうこと。彼らはアウラが残した希望。どうして彼らなのかっていうのを、僕は知りたいんだ」
「……クビア!」
「怒らないでよ。さてと、君との話も飽きたし、そろそろ彼らを迎えに行くとしよう」
「アーク達の所に?」
「そうだよ。さあエル、君も連れて行ってあげよう」
少年――クビアがエルに手を伸ばした瞬間、二人はその場から消えた。