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それはいつかどこかで一度は目にしたシチュエーション。
初めての彼の家へのお呼ばれ。
どきどきしながらやって来たら、家族は皆出掛けてて、お決まりの卒業アルバムチェックにじゃれあってたらいつの間にか倒れ込んだ床の上、彼を見上げて、彼に見つめられて。
ふと笑いの途切れた空間に息を詰めながら、お互い赤い顔のままそっと顔を近づけて……
「………ぷっ!」
「ちょっ、待った!お約束すぎんだろい!」
ダメだ我慢出来ない。
まるで漫画に出てくるようなあまりにもお約束な展開に、ムードより笑いが勝ってしまった。
二人同時に噴き出して、そのまま肩を震わせ笑う。
「あははっ、一瞬このまま流されるべきか迷ったけど無理だった!」
「安心しろい、俺もだ!」
笑いながら身体を起こすブン太が差し出した手に捕まって起こして貰うと、向かいあって座った瞬間目が合って、また二人クスクス笑う。
「お前一瞬『マジで!?』って顔したよなー」
「ブン太だっておんなじ顔してたし!」
…だけど。
向かいあったまま笑い合いながら、それでも離されない起き上がった時借りたブン太の手。
握り合う両手になんとなく力を入れたらぎゅっと握り返してくれるから、やっと治まった笑いにブン太を見れば、なんだか優しく笑って見つめてくれるから。
「…仕切り直し、する?」
「…だな」
離れた右手が髪を撫で、後頭部に回ったと思ったらそのままそっと引き寄せられて――――
「…これもお約束かな?」
「…だな」
ちゅっと一瞬だけ触れ合わせた唇に、額を合わせて。瞳を合わせて。
もう一度唇を合わせた後、また笑い合った
お約束満載の、だけど私たちにとっては特別な、
たった一度のファーストキス。
―END―